訪問看護ステーション管理者の年収相場と実態
まずは、訪問看護ステーション管理者の収入に関する詳細な分析と実態を探ってみましょう。
訪問看護ステーション管理者の平均年収
複数の求人サイト(Indeed、ナースではたらこ、マイナビ看護師)から収集した約100件の訪問看護ステーション管理者の求人情報を分析した結果、以下のような年収傾向が見られました。
- 平均年収:約580万円
- 最低年収:約320万円
- 最高年収:約800万円
地域による訪問看護管理者の年収差
求人情報から、主要都市圏の訪問看護ステーション管理者の年収範囲の傾向を分析しました。
- 東京都:550-800万円
- 大阪府:520-700万円
- 愛知県:500-650万円
- 福岡県:320-600万円
- 北海道:380-580万円
都市部、特に東京都で高い年収の傾向が見られます。しかし、同時に生活費も高くなる点に注意が必要です。
地域の訪問看護需要と年収の関係
訪問看護ステーションの管理者の年収は、以下のように地域の訪問看護需要とも密接に関連しています。
- 需要の高い地域での年収増加の可能性: 高齢者人口が多く、在宅医療の需要が高い地域では、ステーションの収益、管理者の年収にもプラスの影響を与えることがあります。
- 競争の少ない地域での安定した収益: 訪問看護ステーションが充足していない地域では、競争が少なく、安定した利用者の確保が可能です。
- 地域包括ケアシステムの影響: 地域の需要に応じた訪問看護ステーションの経営が重要となり、管理者の年収にも影響を与える可能性があります。
地域の特性を理解し、適切な経営戦略を立てることが、管理者の年収向上につながります。
ステーション規模による年収の違い
求人情報から、ステーション規模と年収の関係を分析しました。
- 小規模(5人未満):320-550万円
- 中規模(5-10人):520-650万円
- 大規模(10人以上):550-1000万円
規模が大きくなるほど、年収も上昇する傾向が見られます。大規模ステーションでは、より多くのスタッフ管理と、業務の効率化を図ることが求められます。
高給管理者の特徴
年収650万円以上の求人に共通する特徴は以下のとおりです。
- 豊富な経験:多くの場合、訪問看護経験か、病棟での管理者経験を要求or優遇
- 仕事量:プレーヤー(看護師業務全般)+管理業務を求める
- 24時間対応:24時間対応体制の管理と対応も必要
- 経営スキル:財務管理やマーケティング能力を重視
これまでの情報から、訪問看護ステーション管理者の年収は経験、地域などの要因、ステーション規模によって大きく変動することがわかります。
(*ただしこれらのデータは、公的機関のものがないため、限られた求人データに基づいています。またサンプル数が限られているため、業界全体の正確な統計ではないことにご留意ください。)
訪問看護ステーション管理者の年収比較
次に、訪問看護ステーション管理者の年収を、一般看護師や他の医療管理職と比較し、その特徴や傾向を明らかにします。
一般看護師との年収比較
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、看護師全体の平均年収は約508万円です。
一般の看護師と訪問看護ステーションの看護師の年収を比較してみましょう。
職種 | 平均年収 | データソース |
---|---|---|
一般看護師 | 約470万円 | 厚生労働省統計 |
一般訪問看護師 | 約400万円 | 求人データ分析 |
訪問看護ステーション管理者 | 約580万円 | 求人データ分析 |
この比較から、訪問看護ステーション管理者の年収は管理者以外の看護師よりも約24〜45%高いことがわかります。
他の医療管理職との年収比較
日本看護協会『「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する 評価・処遇に関する調査」報告書』と、求人サイトのデータを基に、他の医療管理職の年収と比較しました。
職種 | 平均年収 | データソース |
---|---|---|
病院看護部長 | 約658万円 | 求人データ分析 |
病棟看護師長 | 約530万円 | 求人データ分析 |
訪問看護ステーション管理者 | 約480-800万円 | 日本看護協会 |
介護施設管理者 | 約527万円 | (公)介護労働安定センター |
クリニック事務長 | 約400-600万円 | 求人データ分析 |
- 訪問看護ステーション管理者の年収は、病院看護部長よりはやや低いものの、介護施設管理者やクリニック事務長よりも高い傾向にあります。
- 訪問看護ステーションの管理者の年収の幅は、他の管理者より大きいため、病棟看護師長と比べると一概に高いとも低いとも言えません。
年収と業務内容の関係性
求人情報の分析から、高年収の管理者に求められる主な業務内容は以下の通りです。
1. スタッフ管理と育成 2. 財務管理 3. 利用者獲得・営業活動 4. 医療機関との連携 5. 24時間対応体制の構築 |
多岐にわたる業務をこなせる管理者ほど、高い年収を得られる傾向にあります。
(これらのデータは限られたサンプルに基づくものであり、地域の需要や競合の有無、経営状況によって実際の年収や求められる業務内容は異なる可能性があります。)
訪問看護ステーション管理者の年収構成要素
次に、訪問看護ステーション管理者の給与構成について解説します。
基本給の仕組みと相場
求人情報の分析結果から、訪問看護ステーション管理者の基本給の相場は以下の通りです。
- 平均:約40-45万円/月
- 範囲:35-55万円/月
なお、年俸制をとっている求人も2割程度みられました。
管理者手当の内容
管理者(役職)手当は、管理職としての責任や業務の複雑さに対して支給される手当です。求人情報の分析から、以下のような傾向が見られました。
- 平均:約5-8万円/月
- 範囲:3-15万円/月
オンコール手当の実態
訪問看護ステーションでは、24時間対応体制が求められることが多く、管理者もオンコール(待機)の責任を負うことが大いにあります。
求人情報の分析結果から、オンコール手当の相場は以下の通りです。
- 平日:1,000-3,000円/回
- 休日:2,000-5,000円/回
ただし、オンコール手当の支給方法は施設によって異なり、固定額制や時間給制を採用しているところもあります。
賞与(ボーナス)の相場
求人情報の分析結果から、管理者の賞与相場は以下の通りです。
- 平均:年間2.0ヶ月分
- 範囲:年間0-3.0ヶ月分
年俸制ではボーナスが年俸に含まれる求人も多くみられました。
訪問看護ステーションの経営は一般的に病院より厳しい傾向にあります。月収が高くてもボーナスが低い、あるいはボーナスがまったくない場合も見られます。そのため、高額なボーナスを期待するのは難しい状況といえそうです。
残業代の年収への影響
訪問看護ステーション管理者の多くは管理職として扱われるため、残業代が支給されないケースが多いです。しかし、一部のステーションでは例えば一定時間の残業を超えた分に残業代を支給しているところもあります。
求人情報の分析から、残業代が支給される場合の相場は以下の通りです。
- 平均:20-30時間/月
- 時給:2,000-3,000円/時間
年収への影響を計算すると、月20時間の残業を行った場合、年間で約48-72万円の増加となる可能性があります。
その他の手当
上記以外にも、以下のような手当が支給されるケースがあります。
- 資格手当:看護師資格にも支給する場合や、特定の資格(例:認定看護管理者)保有者に対して支給する場合も
- 職務手当:月額3-5万円程度
- 住宅手当:月額1-3万円程度
- 通勤手当:実費支給が一般的
(これらの手当は施設によって異なるため、具体的な金額は求人情報や雇用条件をよく確認する必要があります。)
訪問看護ステーション管理者の年収アップ戦略
必須資格と経験の重要性、そして年収アップに効果的なスキルについてみていきましょう。
必須資格と経験の重要性
厚生労働省による管理者の規定は以下のとおりです。なお、経験年数に明確な定めはありません。
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(出典:『指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について』、『「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」 の一部改正について』 )
その他に、求人情報からうかがえる必要とされる経験の傾向は以下です。
- 訪問看護の経験: 3年以上
- マネジメント経験: 1年以上
- 病棟での管理職経験
一方で、訪問看護や管理者としての経験を問わない求人も多くみられ、需要の多さがうかがえます。
≫関連記事:「複数施設OK?訪問看護ステーション管理者の兼務|2024年改定で変わった内容と運営のコツ」
年収アップに効果的なスキル
年収アップに効果的なスキルは次のとおりです。
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これらのマネジメントスキルを向上させるための具体的な方法は、こちらの記事をご覧ください。
≫「訪問看護ステーション管理者のよくある悩みを解決!効果的なマネジメントを徹底解説します」
訪問看護ステーション管理者の年収の将来展望
訪問看護ステーション管理者の年収は、様々な要因によって今後変動する可能性があります。ここでは、将来的な業界動向について詳しく解説します。
医療・介護報酬改定の内容
訪問看護ステーションの運営に影響を与える要因の1つは、医療・介護報酬の改定です。これらの改定は、訪問看護ステーションの運営方針や提供するサービスの内容に影響を与える可能性があります。
厚生労働省の「令和2年度介護事業経営実態調査結果」によると、訪問看護ステーションの令和4年度収支差率は5.9%となっています。この数字は前年度より1.3%低下しており、経営環境の変化が伺えます。
ただし、これらの改定が直接的に管理者の年収にどのような影響を与えるかは、個々のステーションの対応や地域の状況によって異なることも考えられます。
将来的な業界動向
訪問看護ステーション管理者を取り巻く環境について、以下の要因を考慮する必要があります。
- 需要の変化: 在宅患者数は、多くの地域で今後増加し、2040年以降に203の二次医療圏において在宅患者数のピークを迎えることが見込まれています(R4年厚生労働省「第8次医療計画及び地域医療構想に関する状況」)。
ただし、その増加率には大きな地域差があり、北海道・東北・山陰など一部の地域では既にピークを越えているところもあります。 このため、地域ごとの人口動態も考慮した長期的な経営戦略を立てる必要があるでしょう。 - 人材不足: 令和4年度厚生労働省の「第8次医療計画等に関する検討会」の資料によると、今後も看護職員の需要が高まることが予想され、人員確保の課題が議論されています。この状況は、経験豊富な管理者の重要性を高める可能性があるでしょう。
- 経営の複雑化: 医療・介護制度の変更や競争の激化により、ステーション経営はより大規模化・複雑化すると予想されます。これに伴い、高度な経営スキルを持つ管理者の需要が高まる可能性が高いのです。
- テクノロジーの進化: 厚生労働省の「介護分野におけるICT活用の推進」に関する資料によると、ICTの活用が推進されています。この傾向は今後も続くと予想され、ITスキルを持つ管理者の価値が高まることでしょう。
これらの要因が直接的に年収にどのような影響を与えるかを予測することは困難です。しかし、管理者の役割や求められるスキルに影響を与える可能性は十分にあると言えるでしょう。
管理者としての価値を高める取り組み
- 継続的なスキルアップ: 最新の医療技術や介護技術の習得、経営管理スキルの向上
- ネットワークの構築: 医療機関や他の介護サービス提供者との連携強化
- イノーベーションの推進: 新しいサービスモデルの開発、効率的な運営システムの構築
- 人材育成: 次世代の管理者の育成、スタッフのスキルアップ支援
- 経営の多角化: 関連サービスへの展開、異業種との連携
これらの取り組みを通じて、専門性と経営能力を高めることが、収入アップのみならず将来的なキャリア発展につながるでしょう。
まとめ:訪問看護ステーション管理者の年収向上のポイント
訪問看護ステーション管理者の年収は、経験、スキル、ステーションの規模、地域など多様な要因に影響されます。年収向上には、専門資格の取得、経営管理能力の強化、ICTスキルの向上が重要です。また、医療・介護制度の変更に適応し、多職種連携を推進する能力も求められます。
継続的な自己研鑽と戦略的なキャリア構築により、価値を高め、結果として年収アップの可能性を広げることができるでしょう。
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