そもそも 訪問看護ターミナルケア加算・療養費とは?
介護保険におけるターミナル加算と医療保険におけるターミナルケア療養費は、どちらもターミナルケアを行う体制整備と実施を評価する加算です。
2024年度の介護報酬改定により、ターミナルケア加算の単位数が引き上げられ、ターミナルケア療養費と同等の評価がされるようになりました。
ここでは、それぞれの単位数・点数、そして算定要件や手続きの詳細について解説します。
算定額
算定額は次のとおりです。
- ターミナル加算(介護保険):2024年度の改定により2,500単位/月(支給限度額管理対象外) ※予防訪問看護は対象外
- ターミナルケア療養費(医療保険):ターミナルケア療養費1(25,000円)またはターミナルケア療養費2(10,000円)
なぜ医療保険ではターミナルケア加算と呼ばないの?
介護保険では、死亡月に訪問がなくても加算算定が可能です。一方、医療保険では訪問がない場合、基本療養費や管理療養費とその加算が算定できません。そのため、医療保険では訪問がなくても算定できる別枠の「ターミナルケア療養費」が設けられています。
参考:訪問看護療養費のしくみ
≫参考記事:「【保存版】訪問看護で医療保険が使える条件は?介護保険との違いを徹底解説!」
算定要件
算定要件はどちらも次のとおりです。
- 24時間の連絡体制と訪問可能な体制
- 死亡日および死亡日前14日以内に2日以上のターミナルケア実施
- 主治医との連携
- 利用者・家族への説明と同意取得
- 適切な記録
- 厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の遵守と多職種連携
例えば、算定要件を確実に満たすには、以下のような具体的な対策が有効です。
- ターミナル期の利用者の状態変化を早期に把握するための定期的なアセスメント実施
- 主治医や多職種との密接な情報共有体制の構築(例:週1回のカンファレンス開催)
- ターミナルケア実施記録の標準化(例:チェックリストの作成と活用)
- スタッフ教育:定期的な研修や事例検討会の実施
これらの実践で、適切なタイミングでのケア提供と確実な加算算定が可能になります。
ターミナルケア療養費1と2の違い
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
ターミナルケア療養費1 | 25,000円 | – 在宅で死亡 – 特別養護老人ホーム等で死亡し、看取り介護加算等を算定していない |
ターミナルケア療養費2 | 10,000円 | 特別養護老人ホーム等で死亡し、かつ介護保険の看取り看護加算を算定している |
特別養護老人ホーム等とは?
- 指定特定施設
- 指定認知症対応型共同生活介護事業所
- 指定介護老人福祉施設
- 有料老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 養護老人ホーム
- 認知症高齢者グループホーム
- 特別養護老人ホーム
看取り看護加算とは?
看取り介護加算は、上記の特養等が算定する介護報酬の加算を指します。
「常勤の看護師を1人以上配置し、24時間連絡できる体制を確保していること」が算定要件の1つとなっています。
算定に必要な届出
算定に必要な届出は次のとおりです。
- ターミナルケア加算:所在する自治体や福祉事務所への届出が必要
- ターミナルケア療養費:特別な届出は不要
訪問看護ターミナルケア加算・療養費の注意点と算定ケース
次に、具体的な注意点と算定ケースについて解説します。
注意点
算定の注意点は次のとおりです。
- 死亡月に算定(ケア実施月と異なる場合も可)
- 1利用者につき1事業所のみ、1回限り算定可
- 保険切替時は最後の訪問時点の保険で算定(両方で2日以上の訪問必要)
- 医療機関搬送後24時間以内の死亡でも算定可
- 退院日の退院指導支援も訪問看護提供とみなせる(医療保険)
算定可能なケースと困難なケース(事例付き)
1. 算定可能なケース
- 退院後すぐの在宅での看取り
事例:末期がんのAさん(要介護3)が自宅での看取りを希望され退院、翌日に家族に見守られ最期を迎えた。退院日には退院指導支援を実施。
→ 退院日の退院支援指導加算を算定した場合も訪問とみなせるため、算定可能
- 医療機関への緊急搬送後の死亡
事例:慢性心不全のBさん(要介護4)に、死亡日前14日間に7回、自宅への訪問看護を実施。急変で緊急訪問し病院搬送後、12時間後に死亡確認。
→ 搬送後24時間以内の死亡のため、算定可能
2. 算定困難なケース
- 訪問回数不足
事例:脳梗塞後遺症の利用者Cさん(要介護4)。肺炎で2週間入院後、退院翌日急変し死亡。
→ 死亡日および死亡日前14日の訪問看護実施が1回のため、算定不可
- 複数ステーションの訪問
事例:ALS患者Dさん(要介護5)に、2カ所のステーションが訪問。協議で他方が算定。
→1カ所のみ算定可能のため算定不可
適切な加算算定を通じて、一人ひとりの尊厳を大切にした質の高いターミナルケアを持続的に提供できるよう、日々の実践に取り組んでいくことが重要です。
訪問看護ターミナルケア加算と関連する加算の活用
ターミナルケア加算と関連する他の加算を効果的に活用することで、質の高いケア提供と経営の安定化を両立できます。ここでは、関連加算の違いや効果的な運用方法について解説します。
関連加算との違いと効果的な組み合わせ方
- 看護体制強化加算(介護保険)
- 単位数:500単位/月(Ⅰ)または200単位/月(Ⅱ)
- 主な算定要件
- 緊急時訪問看護加算算定者が50%以上
- 特別管理加算算定者が20%以上
- ターミナルケア加算算定者: (Ⅰ)5人以上/年 (Ⅱ)1人以上/年
- 看護職員60%以上
- 効果:相乗効果で算定機会増加
- 緊急時訪問看護加算(介護保険)・24時間対応体制加算(医療保険)
- 24時間対応体制を評価
- 単位数/金額:574単位/月(介護)、6,520円~6,800円/月(医療)
- 効果:ターミナルケア対象者に安心感と手厚いサポートを提供
※これらの加算はターミナルケア加算・療養費の算定に必須ではありませんが、組み合わせることで質の高いケア提供が可能になります。
≫関連記事:「訪問看護の緊急時加算とは?複雑な医療保険・介護保険の緊急時加算について、わかりやすく解説します!」
訪問看護以外のターミナルケアに関連する加算
ターミナルケアに関する加算は、以下のように多岐にわたる医療・介護サービスにおいて算定が可能です。これらの加算の中には、訪問看護と密接に関連するものも含まれています。
加算名 | 対象サービス(カテゴリ) |
---|---|
在宅ターミナルケア加算 ターミナルケア加算 | 訪問診療(医) 訪問看護や施設といった介護事業所(介) |
訪問看護ターミナルケア療養費 | 訪問看護(医) |
ターミナルケアマネジメント加算 | 居宅介護支援事業所(介) |
看取り加算 看取り介護加算 | 訪問診療(医) 介護事業所(介) |
ターミナルケアマネジメント加算
居宅介護支援事業所のケアマネジャーが算定する加算ですが、訪問看護ステーションとの連携が重要です。定期的なカンファレンスの開催など、利用者を中心にした密接な連携と情報共有が求められています。
看取り介護加算
看取り介護加算は、先にも述べたように、特養などの介護保険施設で算定される加算です。
専門的なサポートを提供し、施設職員への技術指導や助言を行うことで、施設との連携を強化します。
さらに、施設内での役割を明確に分担し、定期的なカンファレンスを通じてケアの方向性を調整します。
このような協力体制により、より質の高い看取りケアの提供が可能となります。
利用者の尊厳ある最期を実現するためには、本人の意思を最大限に尊重したターミナルケアが不可欠です。そのためには、家族を含む多職種が一つのチームとして機能し、共通の認識を持って緊密に連携することが求められます。
質の高いターミナルケア提供と収益最大化の両立には、管理者が各加算の要件を理解し、適切な体制整備とスタッフ教育を行うことが重要です。これにより、地域での評判向上と新規利用者獲得にもつながります。結果として、一人ひとりの尊厳を大切にしたケアを持続的に提供しつつ、経営の安定化も期待できます。
よくある質問:訪問看護ターミナルケア加算Q&A
訪問看護ターミナルケア加算に関して、管理者よく寄せられる質問にお答えします。
Q1 : ターミナルケアの内容として、どのような記録が必要ですか?
A1 : ターミナルケアの記録には以下の内容を含めるとよいでしょう。
- 終末期の身体状況の変化
- 療養上の不安や苦痛に対するケアの内容
- 家族への精神的支援や介護方法の指導内容
- 医療機関との連携状況
- 本人・家族の意思確認の内容と時期
これらの記録は、ケアの質を担保するとともに、算定の根拠となります。一人ひとりの尊厳を大切にしたケアの証であることを心に留めておきましょう。
Q2 : ターミナルケアに特化した訪問看護ステーションの開設を検討していますが、注意点はありますか?
A2 : ターミナルケアに特化することで、高度な専門性を発揮できる反面、スタッフの負担増や経営の不安定さにつながる可能性もあります。
地域のニーズや自施設の強みを十分に分析した上で、開設を検討することが重要です。スタッフの心理的負担にも十分な配慮が必要です。
まとめ:2024年度以降の訪問看護ターミナルケア加算の展望と対策
2024年度の介護報酬改定で、単位数の増加や医療保険との整合性向上により、ターミナルケアの価値がより認められるようになっています。
ターミナルケア加算の適切な運用は、質の高い終末期ケアの提供と経営の安定化につながります。
しかし、最も大切なのは利用者本人の意思を尊重し、その人らしい最期を支えることです。この重要な役割に誇りを持ち、スタッフと共に、一人ひとりの尊厳を大切にしたケアを提供し続けていきましょう。
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