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【もう迷わない!】訪問看護の長時間加算完全ガイド2024|算定要件と経営戦略(医療保険・介護保険別)

【もう迷わない!】訪問看護の長時間加算完全ガイド2024|算定要件と経営戦略(医療保険・介護保険別)

公開:

2024年9月27日

更新:

2024年9月27日

「長時間のケアが必要でも、正直採算が合わない…」
「15歳以上の重症児への対応は?」 

訪問看護ステーションの管理者の皆さん、このような悩みを抱えていませんか?

医療ニーズの高い利用者のQOL向上と介護者支援において、長時間の訪問看護は欠かせない存在です。この点を踏まえ、長時間訪問看護加算が制度化されており、これを適切に活用することで収益アップにもつながります。しかし、複雑な算定要件や制度上の問題に、頭を悩ませている管理者も少なくないはずです。

そこでこの記事では、以下の情報を詳しく解説します。

  • 医療保険と介護保険における長時間訪問看護加算の算定要件
  • 週あたりの算定回数制限や報酬額の関係
  • 重症度の高い利用者への効果的な提供方法と経営戦略
  • 算定が困難なケースへの対応策
     

ぜひ最後までお読みいただき、より良質なケアと経営の安定化をの両立を目指しましょう。

目次

訪問看護の長時間加算とは?

長時間訪問看護加算は、医療ニーズの高い利用者に対して、通常よりも長時間の訪問看護を行った場合に算定できる加算です。この加算には主に3つの目的があります。

・医療依存度の高い利用者への適切なケア提供
・訪問看護ステーションの経営安定化
・質の高い長時間サービスの促進



2024年度の診療報酬改定では、長時間訪問看護加算自体に変更はありませんでした。しかし、関連する、退院支援指導加算の見直しが行われました。

退院支援指導加算とは

医療機関の退院日に訪問し、利用者や家族へ在宅療養の指導を行い、退院日翌日以降の初回訪問看護時に訪問看護管理療養費と合わせて算定できる加算です。

 

退院支援指導加算の改定の主なポイントは以下の通りです。

(引用:令和6年厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」

 
この改定により、退院日当日に複数回の訪問が必要な場合や、合計時間が90分を超える場合にも柔軟な対応が可能となりました。これは、退院日当日の複数回訪問や長時間訪問のニーズが全体の1割強に上るという実態を反映したものです。

 

この変更は、医療ニーズの高い利用者の在宅移行をよりスムーズにし、長時間訪問看護の需要に間接的に影響を与える可能性があります。訪問看護ステーションとしては、この改定を踏まえ、退院支援指導の際の時間管理と記録を適切に行い、加算の算定漏れがないよう注意しましょう。

医療保険における訪問看護の長時間加算

医療保険における長時間訪問看護加算は、次の2種類があります。

1. 一般の長時間訪問看護加算
   – 算定料:5,200円(週1回)
2. 長時間精神科訪問看護加算
   – 算定料:5,200円(週1回)

長時間訪問看護加算の対象となる患者は、以下の3つのカテゴリーに分類されます。

 

  1. 15歳未満の超重症児または準超重症児
    • 超重症児(者)判定基準による判定スコアが10点以上(訪問看護療養費明細書の備考欄へ記載)
  2. 特別管理加算の対象者(別表8に該当)
    • 例:在宅人工呼吸指導管理を受けている状態の者、真皮を越える褥瘡の状態にある
  3. 特別訪問看護指示書または精神科特別訪問看護指示書にかかわる訪問看護を受けている

 

各カテゴリーの算定回数制限は以下の通りです。

カテゴリー対象者算定回数主な特徴
15歳未満の重症児超重症児・準超重症児(判定スコア10点以上)週3回まで複雑な医療的ケアが必要
別表第8該当者在宅人工呼吸指導管理を受けている者など 週1回まで(15歳未満の小児は週3回まで)特定の医療処置が必要
特別指示書対象者 特別訪問看護指示書または精神科特別訪問看護指示書の対象者指示書の期間中週1回まで一時的に集中的な看護が必要

加算を算定した日以外に90分を超える訪問看護を行った場合、「その他の利用料」として受け取ることができます。
 

介護保険における訪問看護の長時間加算

介護保険制度下での長時間訪問看護加算は、医療保険とは異なる特徴を持っています。ここでは、その詳細と効果的な活用方法について解説します。

 


介護保険における長時間訪問看護加算は以下のとおりです。 

  • 算定単位:300単位/回
  • 算定回数:制限なし(ただし、ケアプランに位置づけられた計画的な訪問看護であること)

介護保険における長時間訪問看護加算の算定には、以下の基準を満たす必要があります。

 

  1. 対象者の条件
    • 特別管理加算(Ⅰ)または特別管理加算(Ⅱ)の対象者であること
  2. 時間基準
    • 所要時間が1時間以上1時間30分未満の訪問看護に引き続き訪問看護を行う場合

 

長時間訪問看護加算の算定には、ケアプランへの明確な位置づけが不可欠です。ケアマネージャーとの効果的な連携をはかるため、以下のポイントに注目しましょう。

  1. 医療ニーズの具体的な根拠提示
    •  例:「褥瘡処置に加え、経管栄養の管理も必要なため、通常の訪問時間では十分なケアが困難」
  2. 長時間訪問の必要性を数値やエビデンスで説明
    •  例:「1時間の訪問では処置時間が○○分不足。長時間訪問により、△△の改善が期待できる」
  3. 家族の介護負担軽減効果の明確化
    •  例:「長時間訪問により、家族の△△の負担が○○%軽減される」
  4. 定期的な効果検証と報告の徹底
    •  例:「月1回のモニタリングで、長時間訪問の効果を数値化して報告」

これらの点に注力することで、長時間訪問看護加算の適切な算定と、利用者のQOL向上につながります。

重症患者への効果的な長時間訪問看護の実施方法

長時間訪問看護加算は、適切に活用することで訪問看護ステーションの運営に大きな影響を与える可能性を秘めています。しかし、その影響は単純な収益増加にとどまりません。
ここでは、長時間加算が経営にもたらす多面的な影響について、詳細に分析していきます。

神奈川県が実施した『長時間訪問看護加算』制度についての活用状況調査によると、長時間訪問看護加算の活用には様々な課題と可能性が存在することが明らかになっています。


 

長時間訪問看護加算の活用に関しては、以下の課題が指摘されており、単純な収益増加には繋がりません。

  1. 滞在時間と加算額のアンバランス
    • 課題:加算額が低く、長くなればなるほど報酬のバランスがとれない現状がある
    • 対策:効率的なケア提供方法の検討、複数の加算の組み合わせによる収益最適化
  2. 人件費増加による採算性低下のリスク
    • 課題:長時間訪問に伴う人件費の増加が、加算による収入増を相殺する可能性
    • 対策:スタッフのシフト最適化、訪問ルートの効率化による移動時間の削減
  3. 他のサービスとの調整
    • 課題:特に介護保険では、他のサービスとの組み合わせに制限がある
    • 対策:ケアマネージャーとの連携・調整

 


一方で、長時間加算の活用は以下のようなポジティブな影響ももたらします。

  1. 質の高いケア
    • 状況に合わせたきめ細かな看護の実施
    • より余裕を持った看護ケアの提供が可能に
    • 介護負担の軽減、家族のレスパイト(休息)の確保
  2. 医療依存度の高い利用者へのケア提供能力の向上
    • 重症度の高い利用者を受け入れることで、ステーションの専門性が向上
    • 地域における評判や信頼性の向上につながる可能性

 

この分析は、長時間訪問看護加算が単純な収益増加ではなく、ステーションの機能強化やサービス品質向上につながる可能性を示しています。ただし、収益面での課題も存在するため、慎重な運用が求められるといえるでしょう。

 

 

訪問看護の長時間加算を活用した経営戦略

 

分析結果を踏まえつつ、様々な疾患や状態に応じた効果的な長時間訪問看護の実施方法について、具体的な戦略を解説します。


長時間訪問看護加算の活用状況は、利用者の疾患や状態によって異なる傾向があります。以下に主な傾向と対応戦略を示します。

  1. 神経難病患者
    • 傾向:ALSなどの進行性疾患では加算の活用率が高い
    • 対応戦略:進行状況に応じた柔軟なケア計画の策定、多職種連携の強化
  2. がん終末期患者
    • 傾向:症状コントロールや家族支援に時間を要し、加算の活用機会が増加
    • 対応戦略:緩和ケアの専門知識の向上、24時間対応体制の整備
  3. 重症心身障害児(者)
    • 傾向:医療的ケアの複雑さから、長時間の訪問が必要となり加算の活用が進む
    • 対応戦略:小児在宅医療の専門性強化、家族指導の充実
  4. 精神疾患患者
    • 傾向:長時間の関わりが必要だが、加算の活用はまだ限定的
    • 対応戦略:精神科訪問看護の専門性向上、関係機関との連携強化

重症患者に対する長時間訪問看護を効果的に実施するためには、以下の5つのポイントをおさえましょう。

  1. 綿密なアセスメントと計画立案
    • 利用者の状態を詳細に評価し、長時間訪問の必要性を明確にします。
  2. 多職種連携の強化
    • 医師や他のサービス提供者と密に連携し、ケアの方向性を共有します。
  3. スタッフの教育と支援
    • 長時間訪問に対応できるよう、スタッフの専門性向上と精神的サポートを行います。
  4. 家族支援の充実
    • 長時間訪問を通じて、家族への指導や精神的支援も行います。
  5. ICTの活用
    • タブレットなどを用いて、効率的な記録や情報共有を行います。
       

長時間訪問看護の効果的な実施には医師や他サービスとの多職種連携が不可欠であることが示されています。以下に、連携強化のための具体的な方策を示します。

  • 定期的なカンファレンスの開催
    • ポイント:Web会議ツールを活用し、参加のハードルを下げる工夫を
  • 効率的な情報共有ツールの活用
    • 例:クラウド型の情報共有システム導入、セキュリティに配慮したSNSの利用
  • 明確な役割分担と協働体制の構築
    • 例:多職種連携シートの作成と定期的な更新、各専門職の強みを活かした役割設定

 

調査結果は、長時間訪問看護が家族支援の機会として重要であることを示唆しています。この知見を活かし、以下の戦略を提案します。

  • きめ細やかなレスパイトケアの提供 :ご家族の休息時間確保のための訪問時間の柔軟な調整
  • ケア技術の段階的かつ丁寧な指導 :ご家族の理解度に合わせた指導計画の立案、動画を用いた復習教材の提供
  • 心理的サポートの充実 :長時間の関わりを通じた信頼関係の構築、必要に応じて専門家との連携

 

これらの戦略を効果的に用いることで、質の高い長時間訪問看護を実現し、ステーションの専門性向上と地域における評価の向上につながります。

 

理想的には長時間の継続的なケアが必要なケースでも、制度上の制約から長時間加算の算定が困難な場合も少なくありません。限られたリソースの中で質の高いケアを提供するための現実的な方策を考えてみましょう。


 

15歳以上の利用者に対しても2回目以降の長時間ケアが必要なケースは多いでしょう。そのようなケースでも、以下のような対応策が考えられます。

1. 既存の訪問枠の見直し:長時間加算の算定可能な日に重点的にケアを集中

2. 効率的な訪問計画:必須のケアと調整可能なケアを整理し、訪問頻度を最適化

3. 家族との綿密な連携:日々の状況を詳細に把握し、必要不可欠なケアに注力
 

 


 

  • 同一日複数回訪問による分割ケア
  • 複数名での集中的ケア提供
  • 柔軟なシフト調整
  • 家族の理解を得た継続ケア
  • 他サービスとの連携強化
  • 地域の実情に応じた取り組み

さらには、地域の特殊なニーズに対応する施策の提案や協議を、自治体へ働きかけることも有効です。

 

これらの工夫を組み合わせることで、長時間加算の算定が難しいケースでも、患者のニーズに応じた柔軟かつ効果的なケア提供が可能となるかもしれません。ステーションの規模や地域の特性に応じて、まずは実現可能な方策から段階的に取り入れましょう。地道な努力の積み重ねが、長期的には大きな成果につながります。

 

 

訪問看護の長時間加算を活用した効果的な経営戦略と今後の展望

長時間訪問看護加算は、医療ニーズの高い利用者へのケア提供と訪問看護ステーションの経営安定化を両立させる重要なツールです。

この加算を効果的に活用するためには、算定要件の正確な理解と記録、多職種連携の強化、スタッフの育成と支援体制の整備が不可欠です。ICTの積極的活用や定期的な経営分析も重要です。

しかし、長時間訪問看護加算の活用は単なる収益向上の手段ではありません。利用者のQOL向上と在宅医療の推進という本来の目的を常に意識しながら取り組むことが重要です。

質の高いケア提供と経営の安定化を両立させることで、地域の在宅医療を支える重要な役割を果たすことができます。
各ステーションの状況に応じた最適な戦略を立案し、実践することで、より良質な訪問看護サービスの提供と事業の持続的成長を実現しましょう。

 


 

えがおDE看護は”電子カルテ機能”と”レセプト請求機能”に特化して、26年現場の声や複雑な制度に対応し続けているので、訪問看護ステーション業務をお任せできます。

管理者の本来の使命であるステーション運営を通じた「良質な看護サービスの提供」 に当たり前に集中できる毎日を実現します。是非お問い合わせください。

最後までご覧くださりありがとうございました。

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