受付時間
平日9:00~17:30
完全版:訪問看護初回加算の徹底攻略マニュアル【2024年度最新版】

完全版:訪問看護初回加算の徹底攻略マニュアル【2024年度最新版】

公開:

2024年3月19日

更新:

2024年6月14日

目次

訪問看護ステーションの経営において、適切な介護報酬請求は非常に重要です。
特に、2024年度の介護報酬改定で拡充された初回加算は、新規利用者の獲得や収益向上に影響を与える加算です。
しかしながら初回加算の算定要件は複雑で、請求ミスや請求漏れとなりやすい加算でもあります。

本マニュアルは、訪問看護ステーションの管理者を対象に、初回加算の徹底的な理解と正確な請求を支援するために作成されました。

初回加算の定義や算定要件、具体例、留意点などを詳しく解説し、適切な請求のポイントをお伝えします。
単なる解説にとどまらず、実践的なノウハウやトラブルシューティングまで網羅しています。
初回加算を完全攻略するための必須ツールとして、ぜひ活用してください。

本マニュアルは、以下の特徴を備えています。

  
網羅性:初回加算に関するあらゆる情報を網羅! 
分かりやすさ:専門用語も分かりやすく解説! 
実践性:具体的な事例やノウハウを紹介! 
信頼性:厚生労働省の情報に基づいた最新の情報!
  



訪問看護ステーションでは、新たに利用者を受け入れる際や要介護度の変更などで、訪問看護計画を新規に作成したり見直す必要がある場合に「初回加算」を算定できます。

初回加算は、訪問看護サービスの質の向上と、利用者の状態把握・アセスメント・最初の訪問看護計画の作成に対する評価として設けられています。

介護報酬で算定できる加算の一つであり、利用者へのサービス向上と事業所の経営安定を目的としています。

関連記事【介護保険による訪問看護とは?】

医療保険における訪問看護では、安全に訪問看護サービスを提供できる体制を整えている訪問看護ステーションが、訪問看護の実施に関する計画的な管理を継続して行うことで、訪問看護基本療養費に加え、毎回の訪問看護管理療養費が算定できます

訪問看護管理療養費は、月の初回の訪問日が機能強化型以外でも7,440円、月の2日目以降の訪問日は3,000円/日です。

つまり、医療保険では利用開始時だけでなく、毎月、月の初回の訪問日は高く設定されています。


2024年度介護報酬改定により、要介護者などのより円滑な在宅移行を訪問看護サービスとして推進する観点から、看護師が退院・退所当日に初回訪問することを評価する新たな区分が設けられます。

具体的には、これまで1種類だった初回加算に上位区分が新設され、初回加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類になりました。

単位数は初回加算(Ⅰ)で350単位/月、初回加算(Ⅱ)はこれまでと同じ300単位です。

報酬単価では(Ⅰ)は約3,500円、(Ⅱ)は約3,000円です。
利用者負担にすると、(Ⅰ)で1割負担の方で約350円、3割負担の方で1,000円程度、(Ⅱ)は1割負担の方で約300円、3割負担の方で900円程度となります。

改定の背景は、例えば家族との調整や服薬援助、点滴の管理など、退院当日に必要なケアに入る事業所を評価し、在宅移行の円滑化をはかる考えです。



改定前

改定後
初回加算 300単位/月
 初回加算(Ⅰ) 350単位/月 新設
 初回加算(Ⅱ) 300単位/月

2024年度介護報酬改定|初回加算の見直し
(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」


初回加算は、区分支給基準限度額に含まれる加算です。

      


初回加算(Ⅰ)(新設)

新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所などから退院した日に指定訪問看護事業所の看護師が初回の指定訪問看護を行った場合に所定単位数を加算する。ただし、初回加算(Ⅱ)を算定している場合は、算定しない。

初回加算(Ⅱ)

新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所などから退院した翌日以降に初回の指定訪問看護を行った場合に所定単位数を加算する。ただし、初回加算(Ⅰ)を算定している場合は、算定しない。

留意点は以下のとおりです。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の併用はできない
退院時共同指導加算を算定していないこと
原則として初回訪問は看護職員が行う必要があるが、看護職員(准看護師を除く)と理学療法士などが連携して訪問看護計画書を作成していれば、准看護師や理学療法士などが訪問しても算定可能


初回加算(Ⅰ)(Ⅱ)とも、加算対象者は以下のとおりです。

  • 新規の利用者
  • 過去2ヶ月間(歴月)当該訪問看護事業所から訪問看護を受けていない方
  • 要介護⇔要支援への区分変更の利用者

暦月とは、「月の初日から月の末日まで」を指します。 

暦月による過去2月間の例として、以下の図のように、4月15日に利用者に指定訪問介護を行った場合、初回加算が算定できるのは、同年の2 月1日以降に当該事業所から指定訪問介護の提供を受けていない場合です。 
過去60日間ではありませんので注意が必要です。
歴月2カ月は当該事業所の利用履歴に限ります。他の事業所で2カ月以内に利用していた場合は算定できます。


初回加算の算定時期は、新規訪問看護計画書を作成した利用者に対して、初回訪問を行った月です。


以下に、初回加算が算定される具体的な事例を紹介します。

要介護3のAさんが、初めて訪問看護サービスを利用開始しました。
過去2ヶ月間(歴月)に当該訪問看護ステーションから訪問看護を受けていないため、初回加算を算定できます。

具体的な手順

  • 利用者の状態把握
  • 訪問看護計画書の作成
  • 初回訪問の実施


当該訪問看護ステーションを利用中の要介護2のBさんが2/20入院となりました。5/2に退院となり訪問看護サービスが再開されることとなりました。
過去2ヶ月間(歴月)に当該訪問看護ステーションの訪問がなかったため、初回加算を算定できます。

具体的な手順

  • 利用者の状態把握
  • 訪問看護計画書の新規作成
  • 訪問の実施

要支援1だったBさんが、要介護2に区分変更されました。
過去2ヶ月間(歴月)に当該訪問看護事業所から区分変更による初回加算を算定していないため、区分変更後の初回訪問時に初回加算を算定できます。

具体的な手順

  • 利用者の状態把握
  • 訪問看護計画書の更新
  • 初回訪問の実施
要介護1のDさんが、理学療法士によるリハビリテーション目的で訪問看護を利用することとなりました。
看護職員(准看護師を除く)と理学療法士などが連携して訪問看護計画書を作成していれば、初回に理学療法士が利用者宅を訪問し、リハビリテーションを実施した場合にも初回加算を算定できます。

具体的な手順

  • 利用者の状態把握
  • 看護職員と理学療法士などが連携して訪問看護計画書の作成
  • 初回訪問の実施


要介護4のEさんは別の訪問看護ステーションの訪問看護を利用していましたが、この度当ステーションも介入することとなりました。
同月内に複数の訪問看護事業所を利用開始した場合も含め、初回加算の算定要件を満たす場合、いずれの事業所でも初回加算を算定できます。

具体的な手順

  • 利用者の状態把握
  • 各事業所との連携
  • 各事業所での初回訪問の実施

医療保険で訪問看護を受けていたFさんが、介護保険での訪問看護サービスを利用開始しました。
過去2ヶ月間に医療保険での訪問看護を受けているため、初回加算は算定できません


要介護3のGさんが退院後に頻回の訪問が必要と判断され特別指示書に基づいて訪問看護を行いました。この度状態が安定し、介護保険による訪問看護に変更になりました。
特別指示期間は医療保険による訪問看護を行っていたため、退院時共同指導加算を算定していない場合や、新たに訪問看護計画書を作成した場合でも、初回加算は算定できません


要介護5のHさんの退院時に、医療機関などと連携し指導を行い、初回訪問月に退院時共同指導加算を算定します。
退院時共同指導加算(600単位)を算定するため、初回加算は算定できません。これは、両方の加算の算定根拠が重複するためです。



次のチェックリストを用いて、算定要件を満たしていることを確認しましょう。

▢利用者は過去2ヶ月間(歴月)に当該訪問看護事業所から訪問看護を受けていないか
▢利用者は介護保険による訪問看護サービスを利用開始するか
▢退院時共同指導加算を算定していないか
▢利用者は要支援1~2または要介護1~5の認定を受けているか
▢初回訪問は看護職員(准看護師以外)が行っているか、または看護職員(准看護師以外)と連携して訪問看護計画書を作成しているか



初回加算を請求するには、以下の書類が必要です。

  • 新たな訪問看護計画書…過去に作成した計画をそのまま使用してはいけません。
  • 初回訪問時の看護記録…看護記録に訪問看護計画書を利用者・家族に説明し交付した旨を記載しておくか、別途一覧にして控えておくと実地指導の際に安心です。


初回加算の算定要件を満たしていない場合、請求しても返戻となります。算定要件をしっかりと確認し、誤請求を防ぎましょう。

初回加算は区分支給基準限度額に含まれる加算です。ケアマネジャーが提出する管理給付表と突き合わせて確認されます。
この際に、ケアマネジャーが提出する管理給付表と訪問看護が提出した請求書とに相違がある場合には返戻となります。


初回加算は初月にしか請求できません。

加算を請求し忘れてしまった場合は、加算のみや翌月以降には請求が認められませんのでいったん請求を取り下げなければなりません。
該当保険者へ過誤の申立をして、過誤処理終了後に正しい内容で再請求する必要があります。


誤請求をしてしまった場合は、速やかに訂正請求を行いましょう。過剰請求は、不正請求とみなされる可能性があります。

2024年度の介護報酬改定において、初回加算に退院当日に訪問した場合の上位区分が設けられた根拠について解説します。

改定の背景を知ることで、昨今の医療・介護事情や訪問看護の動向を把握することはもちろん、国が示したい本質的な意図を読み取ることが可能です。

訪問看護ステーションの経営の安定化だけでなく、利用者と家族中心のケアの推進や医療の効率化に貢献し、在宅ケアの質の向上に寄与することが期待されます。


初回加算(Ⅰ)が設けられ退院当日の訪問の充実が勧められている背景には、以下のような理由があります。

  • 入院中の患者が退院後円滑に在宅療養に移行するためには、医療と介護の切れ目のない連携が重要である。
  • 訪問看護利用者のニーズに対応し、在宅での療養環境を早期に整える観点から、令和3年度介護報酬改定において、主治医が必要と認める場合に退院当日の訪問看護(看護職員など)が算定可能となった。
  • 退院当日に訪問を要した利用者・家族の困りごととして、「体調・病状」「緊急時の対応」などが多く、退院当日から「服薬援助」「家族との調整(ケアの指導など)」「点滴の管理」などの医療的な対応が行われている。
  • 急性増悪などにより一時的に頻回な訪問が必要な場合は、特別訪問看護指示書により医療保険の訪問看護サービスを受けることも可能である一方、医療保険の訪問看護の対象とならない例もある。

⇩⇩


退院前後の支援の重要性に鑑み、退院日の訪問看護の充実、評価を充実してはどうか。


厚生労働省の資料による、初回加算の算定状況は以下のとおりです。

初回加算の算定数は年々増加しているんですね。割合は6割で推移していますね。

残りの4割は、①同じく介護保険で在宅移行を支援する退院時共同指導加算の算定と、②例えば退院時は頻回な訪問が必要とされ特別指示書が出された場合などの医療保険による訪問看護から介護保険に移行し初回加算を算定できないケース、③再開の際の算定漏れなどが考えられます。

次に、退院日に必要があった場合の利用者の状況は以下のとおりです。

退院にあたっての体調や病状に関する不安をもたれる利用者やご家族は多いですね。緊急時や医療処置への困りごとや心配が多いこともわかります。

今後の見通しとして、医療的な処置を必要とし在宅へ移行する利用者の増加が予想されるなど、退院当日の訪問はより重要性は増していきますね。



退院日の訪問看護では次のようなことが求められます。

  1. 円滑な在宅移行の促進

    退院当日に看護師が初回訪問することで、利用者とその家族に直接的なサポートと情報提供が可能となります。
    在宅での生活に必要な支援や環境の調整も早期に行いやすくなり、在宅療養における不安や課題に迅速に対応し、安心感を提供することが期待されます。

  2. 緊急時対応など退院後すぐからのケア

    退院後の状態の変化、緊急時に対応するためのスキルが求められます。
    アセスメント、他機関との連携、コミュニケーション能力などのスキルの向上が必要です。
    退院前に連携しある程度準備をしていても、実際家に帰ってみると想定どおりにはいかなかった、といったケースも多くみられます。
    経験をもとに、柔軟に対応する力が期待されます。


A:初回加算は、事業所が利用者の状態を把握し、適切なサービスを提供するために必要な事務作業を評価するものです。
過去2ヶ月に受けていないかどうかは、当該事業所に限ります。事業所の変更など、他の事業所で訪問看護を利用していた場合は、2ヶ月以内であっても初回加算を算定できます。

A:原則として初回訪問は必ず看護職員が行う必要があります。ただし、理学療法士などと連携して訪問看護計画書を作成した場合、理学療法士などが初回訪問を行うことも可能です。

A : 居宅介護支援と違い、要介護状態区分が2区分以上変更された場合は、初回加算の対象となりませ ん。



■新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して訪問看護を提供した場合に、初回の訪問看護を行った月に加算できる
■退院日に訪問の初回加算(Ⅰ)350単位/月と、退院日の翌日以降に初回訪問の初回加算(Ⅱ)300単位/月
■退院時共同指導加算を算定する場合は算定できない
■利用者が過去2ヶ月間(歴月)において、その訪問看護ステーションから訪問看護(医療保険の訪問看護を含む)の提供を受けていない場合で、新たに訪問看護計画書を作成した場合も算定可能
■要介護から要支援(逆も同じ)に変わった時も算定可能
■複数の訪問看護ステーションが関わる場合、どのステーションも算定可能
■看護職員(准看護師を除く)と理学療法士などが連携して訪問看護計画書を作成していれば、准看護師や理学療法士などが訪問しても算定可能 
■医療保険から介護保険へ切り替わった場合には算定できない

初回加算は、訪問看護事業所の収益向上に大きく貢献する加算です。本マニュアルを参考に、初回加算の算定ルールを正しく理解し、適切な請求を行うようにしましょう。

本マニュアルは、訪問看護事業所の管理者だけでなく、請求担当者やケアマネージャーなど、初回加算に関わる全ての方にとって役立つ資料となれば幸いです。





≫関連する記事【介護保険による訪問看護とは?】



えがおDE看護は”電子カルテ機能”と”レセプト請求機能”に特化して、26年現場の声や複雑な制度に対応し続けているので、訪問看護ステーション業務をお任せできます。

管理者の本来の使命であるステーション運営を通じた「良質な看護サービスの提供」 に当たり前に集中できる毎日を実現します。是非お問い合わせください。

最後までご覧くださりありがとうございました。


新着記事