受付時間
平日9:00~17:30
管理者必見!訪問看護における特別指示書(特別訪問看護指示書)の医療保険での役割を解説

管理者必見!訪問看護における特別指示書(特別訪問看護指示書)の医療保険での役割を解説

公開:

2024年4月2日

更新:

2024年6月11日

目次

「特別訪問看護指示書が出るのは、どんな時なんだろう?」
「指示書が出ると、訪問看護の回数や料金はどう変わるの?」
「普通の指示書とは何が違うの?」

訪問看護ステーションの管理者なら、こんな悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

特別訪問看護指示書は、頻回な訪問看護が必要となった場合に、医療保険下で重要な役割を果たします。
でも、いざ発行となると、その交付条件や対象となる症状、月をまたいだ場合の取り扱いといった実務上の細かな問題など、わからないことも多いですよね。

この記事では、以下の内容を、現役訪問看護師である筆者が実体験もふまえてわかりやすく解説します。

   
  ・特別指示書の基本ルール(回数や指示期間など)
  ・特別指示書の交付条件(対象となる状態や料金体系など)
  ・特別指示書と通常の指示書の違い
  ・訪問看護ステーションの対応方法や準備
 

ぜひ最後まで読んで、訪問看護ステーションの管理に役立ててください。

特別指示書(特別訪問看護指示書・特指示)とは、病状急変、終末期、退院直後などに、通常の訪問看護指示書とは異なる条件で発行される指示書です。
主治医が診療に基づき、患者の病状や症状に応じて、一時的に頻回な訪問看護が必要と判断した場合に交付されます。

特別指示書の主な役割は、以下の3点にまとめられます。

1. 医療ニーズの高い利用者に対して、訪問看護の回数や時間を柔軟に設定できること
2. 在宅での療養生活を支援し、症状悪化や再入院を防ぐことができること
3. 訪問看護ステーションが、医療保険に基づいた適切な報酬を受けられること

つまり、特別指示書は、重度の医療ニーズを有する利用者の在宅療養を支えるための重要なツールといえます。
 



頻回な訪問を必要とする場合に発行される特別指示書には、以下のようなルールが定められています。


◆特別指示書による訪問看護は、【訪問看護指示書】が交付されていることが前提条件になります

◆特別指示書の交付は原則として月1回で、主治医が「100点」を算定できます。ただし、「気管カニューレを使用している状態にある者」「真皮を超える褥瘡の状態にある者」については、月2回まで交付できます

指示期間は14日間までで、月をまたいでもかまいません

◆介護保険対象の利用者の場合、医療保険による訪問看護に切り替わります
 



通常の訪問看護指示書と特別訪問看護指示書の主な違いは、指示期間と頻度に関する指示内容にあります。

指示書の種類通常の訪問看護指示書(医療保険)特別訪問看護指示書
指示期間 最長6ヶ月最長14日間
指示内容週に1~3回週に4回以上
1日1回1日に複数回
1回30分~90分週に1回に限り90分以上
1カ所の訪問看護ステーション複数の訪問看護ステーション可

通常の指示書が最長6ヶ月であるのに対し、特別指示書の有効期間は最長14日間と短くなっています

通常の訪問看護指示書では週3回までの訪問看護が利用できます。これに対し、特別指示書では週4回以上の頻回な訪問が指示されます

また、1日に複数回の訪問週に1回に限り90分を超える長時間訪問が可能になります。

なお、複数の訪問看護ステーションを利用することも可能です。

これらにより、より集中的かつ継続的なケアを提供することができるのです。

  • 厚生労働大臣が定める疾病等の利用者(別表7、別表8)
  • 訪問看護指示書の交付の対象者であって、週4日以上の訪問看護が計画されているもの。
  • 厚生労働大臣が定める疾病等の利用者(別表7、別表8)であって、週7日の訪問看護が計画されているもの。

特別訪問看護指示期間は、介護保険対象の利用者の場合でも、医療保険による訪問看護に切り替わります
急性増悪の症状が改善し、指示期間を訂正してもらった場合は、介護保険による訪問看護に戻ります。

いずれにせよ、特別訪問看護指示書に基づく訪問看護は、通常の訪問看護とは異なる高度な医療ニーズに対応するためのサービスであるといえます。

≫関連記事【訪問看護で医療保険が適用となる条件まとめ。】

≫関連記事【訪問看護における「別表7」を徹底解説】


 
特別指示書が交付される主な要件は、以下の通りです。


1.急性感染症などの急性増悪時
2.末期の悪性腫瘍以外の終末期
3.退院直後で週4日以上の頻回な訪問看護の必要を認めた場合
4.真皮を越える褥瘡や気管カニューレを使用している状態にある利用者
 

これらの要件に該当する利用者は、いずれも医療ニーズが高く、在宅での療養生活を送るために手厚い訪問看護サービスが必要とされる方々です。

それでは、上の4つについて具体的に解説します。

  1. 慢性疾患の急性増悪時には、重症化を防ぐために頻回の対応を必要とする場合があります。
    例えば、COPDの患者が呼吸困難を訴えている場合や、心不全の患者が体重増加や浮腫を認める場合などには、頻回の訪問看護介入が求められます。

    管理者の方で悩む方が多いのは、どんな疾患でも対象となるのかという点ではないでしょうか?
    結論からいうと、どんな疾患でも対象になります。
    特別指示書の対象となるのは症状や状態であり、疾患ではありません

    例えば筆者の訪問看護ステーションにおいても、感染症状があって自分で水分補給が出来ない、栄養が取れない…というような状態で利用者の生活が破綻してしまうリスクがある場合があります。そのような時は、利用者の希望に寄り添いながら医師に報告して特別指示書の交付を依頼し、一時的に頻回に訪問しています。

  1. 終末期の利用者に対しては、症状コントロールや苦痛緩和のために、頻回な訪問看護が欠かせません。疼痛管理や呼吸困難への対応、家族ケアなどを集中的に行う必要があります。

    がん末期の方は別表7に該当し、特別指示書がなくても頻回の訪問が可能です。

  2. 退院直後は、病状が安定するまでの間、頻回な訪問看護を必要とすることがあります。特に、手術後まもなくの退院や、長期入院後の退院は、在宅療養への移行期に集中的なケアが求められます。

  3. 褥瘡は、重度化すると治癒が難しくなり、利用者のQOLを大きく損ねます。深さが真皮に達するような褥瘡がある場合は、週に4回以上の訪問看護を行い、適切なケアを行うことが重要です。
    気管カニューレの定期的な管理と観察のため頻回な訪問が必要な場合も、特別指示書の対象となります。



特別指示書の交付要件は、利用者の医療ニーズに基づいて設定されていますね。
医療ニーズが高く、頻回な訪問看護を必要とする利用者に対し、適切なサービスを提供するための指標となっていることがわかります。


 


 
特別指示書の対象となる具体的な症状や医療処置には、以下のようなものがあります。

– 中心静脈栄養や点滴・注射など
– ターミナルケアや疼痛コントロール
– 真皮を越える褥瘡の処置
– 気管カニューレからの吸引

これらの症状や医療処置を有する利用者は、特に高度な医療ニーズを有しているといえます。訪問看護ステーションは、これらの利用者に対して、適切な処置や管理、ケアを提供できる体制を整える必要があります。


 
特別指示書の交付は、主治医の判断と指示に基づいて行われます。主治医は、患者の症状や状態を評価し、特別指示書の必要性を判断します。

訪問看護ステーションは、医療機関と密接に連携を取り、利用者に関する情報を共有することが重要です。
具体的な連携方法としては、以下のようなものがあります。

– 定期的なカンファレンスの実施
– 訪問看護報告書の提出と共有
– 電話や面談による情報交換
– 医療機関の多職種との連携

特に、利用者の状態が変化した場合や、新たな医療処置が必要となった場合などには、速やかに主治医に報告し、指示を仰ぐ必要があります。



 
特別指示書の交付手続きは、以下の流れで行われます。

  1. 主治医が診療に基づき特別指示書の必要性を判断
  2. 主治医が特別指示書を作成し、訪問看護ステーションに交付
  3. 訪問看護ステーションが特別指示書を受理し、内容を確認
  4. 訪問看護ステーションが利用者・家族に説明し、同意を得る
  5. 訪問看護ステーションが訪問看護計画を作成し、サービスを開始

訪問看護ステーションは、特別指示書を受理したら、速やかに対応することが求められます。
まず、指示書の内容を確認し、必要な人員や物品、体制を整える必要があります。

また、利用者・家族に対しては、特別指示書に基づく訪問看護サービスの内容や料金体系などについて、丁寧に説明し、同意を得ることが重要です。

その上で、適切な訪問看護計画を作成し、サービスを開始します。
計画の作成にあたっては、主治医の指示内容や利用者の状態、家族の意向などを十分に考慮する必要があります。

特別指示書の交付からサービス開始までの一連の流れを円滑かつ確実に進めることが、訪問看護ステーションに求められる重要な役割といえるでしょう。

令和3年厚生労働省発表の「訪問看護療養費の取扱いの理解のために」には、特別指示書に関して以下のように記載されています(抜粋)。

・特別訪問看護指示書交付時においても症状及び心身の状態の変化など踏まえ、頻回な訪問看護の必要性について相談をし、その結果を記録書に記入しなければならない。

 ・ 特別訪問看護指示書が交付された利用者に対する指定訪問看護については、 当該利用者の病状などを十分に把握し、一時的に頻回に指定訪問看護が必要な理由を訪問看護記録書に記録する。 

・ 特別訪問看護指示書が連続して交付されている利用者については、その旨を訪問看護療養費明細書に記載する。

訪問看護記録は、実施したサービスの内容や利用者の状態、評価などを記載するものです。的確かつ漏れのない記録を作成することが重要です。

また、主治医への報告も欠かせません。訪問看護の実施状況や利用者の状態変化などは、適宜主治医に報告し、指示を仰ぐ必要があります。
主治医との連携を密にすることで、利用者の状態に応じた適切な訪問看護サービスを提供することができるのです。

訪問看護ステーションは、これらの記録と報告を確実に行うことで、特別指示書に基づく訪問看護サービスの質を担保することができるといえます。

頻回な訪問が必要になった理由や、主治医に相談した旨を、訪問看護記録に残さないといけないのですね。スタッフへの教育が必要ですね。

 


特別指示書の有効期間は最長14日間で、特例を除き月1回までの発行のルールで、延長はありません。

14日以上にわたって継続して頻回な訪問が必要な場合は、改めて主治医の指示を受ける必要があります。これは、長期間にわたる頻回の訪問看護が、利用者の状態に適しているかどうかを確認するための措置といえます。

月1回14日までというルールに従っていれば、毎月の交付は可能です。

訪問看護ステーションは、主治医の指示内容を踏まえつつ、利用者の状態や必要性に応じて、適切な訪問回数を設定する必要があります。
 

特別指示書は、原則1人につき月に1回限り交付が基本ですが、指示書の交付回数の特例として、以下の場合は月に2回まで交付することができます。

月に2回交付可能

◆気管カニューレを使用している状態にある者

◆真皮を越える褥瘡の状態にある者
 

月に2回交付できるということは、これら2つの状態にある方は一時的ではなく常時頻回な訪問を必要していると判断されれば、いつでも頻回に訪問看護を受けられますね。

月をまたいで特別指示書が発行された場合は、前月からの持ち越し指示期間に加えて改めて特別指示書の交付を受けられます。

例えば、1月25日から2月7日までの指示書が発行された場合、2月8日から2月21日まで連続して特別指示書の交付ができます。

特別指示書が連続して交付されている利用者については、その旨を訪問看護療養費明細書に記載する必要があります。

訪問看護ステーションは、特別指示書の有効期間や月をまたぐ場合の取り扱いを、正しく理解しておく必要がありますね。
そして、適切な訪問看護サービスを提供し、確実に訪問看護費を算定することが大切だとわかりました。


特別指示書による訪問看護基本療養費の報酬は、週3日目までと週4日目以降で費用が異なります。
具体的には週4日目以降の方が1回あたり500円~1,000円高く設定されています。例えば訪問看護基本療養費(Ⅰ)では、看護師の場合、週3日目までが5,550円、週4日目以降が6,550円です。

また特別指示書による頻回な訪問看護は、加算として通常の訪問看護よりも高い報酬が評価される場合があります。

具体的には、特別指示書による訪問看護の場合、以下のような加算が算定可能な場合があります。

– 難病等複数回訪問加算
– 長時間訪問看護加算
– 複数名訪問看護加算
特別管理加算

これらの加算は、特別訪問看護指示書に基づく訪問看護の特性を反映したものといえます。

例えば、特別管理加算は、特別な管理を必要とする状態の利用者に対する訪問看護に対して算定されます。また、長時間訪問看護加算は、1回の訪問看護の時間が90分を越える場合に算定可能です。

≫関連記事特別管理加算とは?

頻回の訪問やこうした加算により、特別指示書による訪問看護は、通常の訪問看護よりも高い収益を得ることができます。訪問看護ステーションにとって、特別訪問看護指示書の交付は、収益増加の機会といえるでしょう。

ただし、特別訪問看護指示書による訪問看護を提供するためには、それに見合った体制の整備も必要となります。具体的には、以下のような対応が求められます。

– 24時間対応の体制整備
– 特別な管理や医療処置に対応できる人材の確保と教育
– 必要な医療機器や医療材料の準備
– 主治医や医療機関との連携体制の強化

こうした体制の整備を進めることで、特別訪問看護指示書による訪問看護を積極的に受け入れることができるようになりますね。そして、それが収益の増加につながっていきますね。

 


特別指示書による訪問看護は、医療的ニーズの高い利用者の在宅療養生活を支えます。頻回かつ集中的な訪問看護により、利用者や家族の安心感が高まり、在宅療養の継続性も向上します。

特別指示書による訪問看護は、利用者や家族の在宅療養に対する不安を軽減し、安心して療養生活を送ることを可能にする重要なサービスといえますね。


 
特別指示書が交付される利用者は、急速に症状が変化しやすい状態であることが多いです。訪問看護師による頻回な訪問により、状態変化を早期に発見し、的確なアセスメントと適切な処置を行うことが可能となります。また、必要に応じて主治医や医療機関との連携も速やかに図ることができます。

頻回な訪問による対応力の高さにより、重症化を防ぎ、利用者のQOLの維持・向上にもつながりますね。


特別指示書による頻回な訪問看護は、家族の介護負担を大幅に軽減します。医療ニーズの高い利用者の在宅療養においては、家族だけでは対応が難しい医療処置や専門的なケアを訪問看護師が担うことで、家族は安心して介護に専念できます。

また、訪問看護師による相談支援や指導・助言は、家族の精神的な負担を軽減し、介護力を高めることにもつながります。

筆者が勤務する訪問看護ステーションでは、退院後に胃瘻の手技に不安を感じていたご家族のケースがありました。主治医から特別指示書を交付していただき、2週間にわたって訪問看護師が頻回に訪問することで、ご家族が自信を持って胃瘻の手技を行えるようになりました。

特別指示書による訪問看護は、家族に対する支援を通じて、在宅療養を支える重要なサービスといえますね。


特別指示書は、医療保険下で提供される訪問看護サービスの重要なツールです。頻回な訪問を必要とする医療ニーズの高い利用者に対して、適切な訪問看護サービスを提供するための指標となります。

訪問看護ステーションは、特別指示書の意義と役割を正しく理解し、適切に活用していくことが求められます。指示書の内容の確認、訪問看護計画の作成、訪問看護の実施と記録、主治医との連携など、一連の流れを確実に実施することが重要です。

そして、特別指示書による訪問看護を通じて、利用者や家族の在宅療養生活の質の向上に寄与するとともに、自らのステーションの発展につなげていくことが期待されます。

この記事が、特別指示書の理解と活用の一助となり、訪問看護ステーションの質の高いサービス提供に役立つことを願っています。




えがおDE看護は”電子カルテ機能”と”レセプト請求機能”に特化して、26年現場の声や複雑な制度に対応し続けているので、訪問看護ステーション業務をお任せできます。

管理者の本来の使命であるステーション運営を通じた「良質な看護サービスの提供」 に当たり前に集中できる毎日を実現します。是非お問い合わせください。

最後までご覧くださりありがとうございました。

新着記事