「精神科訪問看護を始めたいけど、どんな支援ができるのだろう?」
「精神科に特化するともうかるの⁈きつそうなイメージがあるけど‥‥」
近頃、精神科訪問看護が注目されています。
専門性が必要な分野であり、導入に迷っている方もおられるかもしれません。
今回は、需要が高まる精神科訪問看護の需要増や支援内容、管理のポイントについてわかりやすく解説します。
現状を知って理解を深めることで、地域に必要とされるステーション経営につながります。
精神間訪問看護を始めようか検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
精神科訪問看護の現状
データでみる需要の増加
精神科訪問看護の需要は増加し続けています。
その背景には、精神疾患の患者数の増加、精神保健福祉政策による精神障害者の地域生活への移行などがあります。
精神保健福祉政策の動向として、政府は精神障害者の病院から在宅への移行を進めてきました。
精神障害者が地域の一員として安心して自分らしく暮らせるよう、医療、障害福祉、介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保するものとして、精神疾患にも対応した地域包括ケアシステムの構築が必要とされており、医療体制・精神保健福祉政策の見直しなどの取り組みがなされています。
その中の1つである訪問看護は重要な役割を担っています。
データで精神科訪問看護の動向をみていきましょう。
精神疾患を有する患者数の推移は以下のとおりです。
精神疾患をお持ちの方の総患者数と外来患者数は年々増加していますね。
一方で、入院患者数は減少傾向ですね。6万人ほど減っています。
疾患別では、加齢に伴う精神疾患の患者数の増加が目立ちますね。
精神疾患をお持ちでかつ介護も必要になる方の増加も容易に予測できます。
平成27年の厚生労働省の調査によると、精神療養病棟に入院する患者の約40%が、在宅サービスの支援体制が整えば退院可能とされています。
精神病棟に入院していた方が退院する先は以下のとおりです。
多くの方がご自宅に帰られていますね。
精神科訪問看護で訪問するのは、家・介護老人福祉施設・社会福祉施設ですよね。合わせて74%ほど、年間2万人以上が退院後に訪問の対象者となり得るということですね!
地域移行で重要となる事業・サービスの調査結果は以下のとおりです。
病院から在宅への移行が進むにつれて、地域で暮らす精神疾患の利用者さんが増え、さまざまなサービスが整備されています。その中でも訪問看護の重要性の高さがわかりますね。
精神科訪問看護を行う事業所も増加しています。
精神科訪問看護療養費を算定した事業所数は、平成29年は2,569箇所でしたが、令和3年には4,915箇所となり、4年で倍近く増加しました。
(参考:第17表 事業所数:訪問看護基本療養費及び精神科訪問看護基本療養費)
データをみてよくわかりました。
精神障害の方は年々増加していて、かつ国の政策で精神障害の方も入院ではなく地域で暮らせるように整備を進めているんですね。
その中でも訪問看護は重要な役割を担っており、今後も需要はまだまだ増えそうですね。
特化型精神科訪問看護ステーション
精神科訪問看護の需要の増加に伴い、精神科に特化した訪問看護ステーションも注目されています。
精神科特化訪問看護ステーションのメリット
精神科に特化するメリットには以下が挙げられます。
- 専門性の高いケアを提供できる
- 他職種によるケア、スタッフの専門性を高めやすい
- 関係者間での地域の課題解決
- 専門性が高いことで、他機関との専門チームをつくりやすい。→【精神科重症患者支援管理連携加算イまたはロ】の加算のとりやすさにも◯。
- 発症が若いので長期の利用者が多く、経営が安定しやすい
- 他のステーションと差別化することにより、利用者を獲得しやすい
- 地域によっては精神科に対応できる訪問看護ステーションが少なく、ニーズが高い
精神科特化訪問看護ステーションのデメリット
一方で精神科に特化することでの、デメリットもあります。
- スタッフの確保の難しさ
- 地域の精神疾患のニーズが少ないと、利用者の獲得が難しい
精神科特化ステーションはもうかる??
精神科特化ステーションの需要は、地域により差があります。
特化型ステーションを立ち上げる前に、地域のニーズを十分にリサーチすることが大切です。
管理者は、地域のニーズを知り、精神科を地域でみる視点を養っていくことが求められます。
地域資源を強化し、地域に必要な訪問看護ステーションとなる視点が重要です。
今後、多くの地域では利用者の高齢化も進むことが予測されます。
要介護状態の方や、がんなどの合併症を併せ持つ精神障害者の方に対応するため、精神科特化ステーションでも緩和ケアなどの医療ケアを提供できる体制も求められるでしょう。
どのような訪問看護のニーズがあるのかをしっかり見据え、自身のステーションの特徴で差別化し、健全な経営を目指したいですね。
精神科訪問看護の目的・支援内容
3つの目的
精神科訪問看護の目的は以下のとおりです。
- 再発予防・服薬支援
- 服薬確認、受診支援、コミュニケーションによる病状の観察など
- 生活支援・生活リズム・利用者様の自立
- 自立した生活を営むために必要な技能(精神的・身体的)の獲得や向上をめざします。
- 社会資源の活用支援・社会復帰へ向けてのサポート
- 役所での手続き支援
- 復学/就職サポート など
服薬管理を含む状態把握により、症状の悪化を未然に防ぎ、入院に至らずに済むこともあります。
また自立した生活を営むための技能を維持・向上させ、さらに社会生活の充実や就労・復職のサポートも行います。
精神科訪問看護の対象者は?
精神科訪問看護の対象は、精神疾患を抱えている方とそのご家族で、家族を全体として捉えて支援します。
精神科以外の訪問看護と違って家族も含まれることがポイントです。
家族自らが健康問題を解決し、家族の健康、健康的な家族生活の維持あるいは向上を目指し、予防的・支持的・治療的な看護を行います。
精神科訪問看護の利用者数の推移と年齢階級内訳は以下のとおりで、利用者数は年々増加傾向で、40歳代、50歳代が多いことがわかります。
引用:R4年厚生労働省「訪問看護の対象者の理解」
主たる病名分布は以下のとおりで、統合失調症の方が半数を占めます。
GAF尺度別の人数分布は以下のとおりで、GAFスコア60から51の、中等度の症状か、社会的・職業的・または学校の機能における中等度の障害をお持ちの方が最も多くなっています。
支援内容
精神科訪問看護において提供しているケア内容の上位は以下のとおりです。
1位 精神症状の観察 88.2% 2位 心理的支援 62.4% 3位 服薬援助 57.2% 4位 家族への指導・支援 38.3% 5位 サービスの連絡調整 28.0% 6位 リハビリテーション 17.1% |
次いで清潔介助や、創傷処置・血糖測定などの医療ケアが続きますが、医療ケアの割合は10%以下で多くありません。
その他、公共施設利用の援助、社会資源の活用、住環境等や仕事・学校に関する援助など、精神・身体的なケアだけではなく、多様なニーズに対応します。
精神科訪問看護に関わる制度
精神科訪問看護利用者の保険種別の利用状況は以下で、国民健康保険の利用者が最も多く、生活保護の利用者も3割以上です。
筆者が勤務するステーションでも、精神障害を抱える利用者から経済的な不安をおききすることがよくあります。
社会復帰など今後の生活への不安をお持ちになることも多く、精神障害者が在宅で利用できる制度について知っておくことで、日頃の訪問の中で相談にのり、関係機関とも連携しやすくなります。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者手帳は、精神障害のため、長期にわたり日常生活や社会生活への制約がある方を対象とした手帳です。
手帳の取得でさまざまな公的支援を受けられます。
対象
精神障害者手帳交付の対象となるのは全ての精神疾患です。
知的障害の方の場合は、療育手帳制度の対象となり、精神障害者手帳の対象にはなりません。(発達障害と知的障害両方の場合は、両方の手帳を受けられます。)
ただし、手帳を受けるためには、精神障害による初診日から6か月以上経過している必要があります。
等級
精神障害者手帳には以下の1級から3級までの等級があります。
[1級] 例) | 周囲の人の援助がなければ、ほとんど自力だけでは生活を送ることができない程度にある方 医療機関への外出、食事の準備、片付けが一人ではできない 金銭管理が困難 など |
[2級] 例) | 必ずしも周囲の人のサポートが必要なわけではないが、日常生活は困難な程度の方 付き添いなしでも外出はできるが、ストレスがかかる出来事が起こると一人では対処できない 清潔保持を自発的かつ適切に行うのが難しい 日常生活の中で適切な発言ができないことがある など |
[3級] 例) | 日常生活、社会生活に一定の制限がかかる、もしくは制限をかける必要がある程度の方 日常的な家事はできるが、状況や手順が変わると対応できない時がある 引きこもりがちではない 行動のテンポはほぼ周囲の人と合わせられる など |
受けられる支援
手帳を取得することで、等級により以下の支援やサービスを受けられます。
- 就職に関する支援
- 税金の控除や減税
- 公共料金などの割引
自立支援医療(精神通院医療)制度
自立支援医療は、精神疾患(てんかんを含む)で、通院による精神医療を続ける必要がある病状の方に、通院のための医療費を軽減するもので、訪問看護療養費にも適用されます。
自立支援医療制度の対象となる訪問看護ステーションになるために、都道府県・市等に「指定自立支援医療機関」としての申請が必要です。
対象
自立支援医療の対象となるのは全ての精神疾患です。
症状がほとんど消失している方でも、再発を予防するために通院治療を続ける必要があると判断された場合は対象となります。
統合失調症などで、医療費が高額な治療を長期間にわたり続けなければならない方は【重度かつ継続】という区分が適用され、さらに自己負担額が軽減されます。
重度心身障害者医療費補助制度(福祉医療)
重度障害者医療費助成事業は、重度の身体的または精神的な障害を持つ人々が医療サービスを受ける際に、その医療費の一部を自治体が助成する制度で、訪問看護療養費にも適用されます。
この制度を利用すると、あらゆる病気の治療について医療費が無料 ・あるいは低額になります。
対象
障害者手帳1級〜3級(自治体によって変わります)をお持ちの方で、所得要件に合う人が利用できる制度です。
自立支援医療との併用
一定の所得があっても利用できる自立支援医療を利用しておられる方が多くおられます。
自立支援医療と重度医療費補助制度の両方を利用できる方の場合は、自立支援医療によって軽減された自己負担金を、さらに重度医療で軽減するという使い方になります。
精神科訪問看護はきつい?
精神科訪問看護における管理者の困難についての研究「管理者の認識する精神科訪問看護実践における困難」によると、以下のような困難が明らかになっています。
- 制度上の困難5つ
- 導入までの調整の複雑さと導入の不確実さ
- 援助体制の頻回な調整
- 常時の高緊張状態
- 専門性を高める機会が限られる
- 専門職種間連携の困難
- 実践に対する困難4つ
- 精神症状に応じた対応の困難さ
- 利用者との援助関係構築の難しさ
- 家族との援助関係構築の難しさ
- 専門性の不足
これらの困難に対し、さまざまな対策が講じられています。
⇒まず制度面では、診療報酬の改定や、地域における相談体制の構築などがあります。
【複数名精神科訪問看護加算】は、精神科以外の訪問看護とは異なり、1日あたりの訪問回数につき加算額が設けられており、また訪問毎に加算できます(看護補助者又は精神保健福祉士との同行を除きます)。
⇒次にステーションができる対策としては、以下が挙げられます。
- 保健師、作業療法士など他職種での対応
- 精神保健福祉士(PSW)を雇用し、相談体制を強化
- 関係機関と連携した包括的支援マネジメントや、地域内連携
など
精神科訪問看護のQ&A
精神科訪問看護についてよくある質問をまとめました。
Q.訪問看護と精神科訪問看護が併用できるの?
⇒両方の算定はできません。
精神科訪問看護を利用中の方が、例えばがんや心不全などの疾患を発症した場合はどうすればよいのか迷いますよね。
引き続き精神科訪問看護が必要であれば、精神科以外の医師が精神科の主治医に情報提供し、精神科訪問看護指示書にその内容を記載し指示することで、精神科訪問看護として実施できます。
ただし、精神科訪問看護療養費は理学療法士による訪問の場合は算定できませんので注意が必要です。
Q.外出支援は行えるの?
⇒精神障害をお持ちの方は、外出への不安や意欲の低下などで外出が難しいことがあります。
自立支援を目的に、一緒に近所を散歩したり買い物に行くことで、気分転換や自信の向上を促すことができます。
まとめ
病院を退院された後、あるいは外来通院されている精神障害をお持ちの方が、地域で安心して治療を継続しながら生活を送ることができるよう支援していく精神科訪問看護。
高い専門性が求められ、地域に根ざした経営をはかることが重要であることがわかります。
ぜひこの記事を活用し、精神科訪問看護について理解を深めてください。
えがおDE看護は”電子カルテ機能”と”レセプト請求機能”に特化して、26年現場の声や複雑な制度に対応し続 けているので、訪問看護ステーション業務をお任せできます。
管理者の本来の使命であるステーション運営を通じた「良質な看護サービスの提供」 に当たり前に集中できる 毎日を実現します。是非お問い合わせください。
最後までお読みくださりありがとうございました。