訪問看護基本療養費の概要と種類:一目でわかる比較表
まずは訪問看護基本療養費の全体像をおさえましょう。
その種類と特徴を理解することで、適切な算定と効率的な運営が可能になります。
そもそも訪問看護基本療養費とは?訪問看護管理療養費との違い
訪問看護基本療養費と訪問看護管理療養費は、訪問看護サービスにおける二つの主要な報酬体系です。以下の表でその主な違いを比較します。
項目 | 訪問看護基本療養費 | 訪問看護管理療養費 |
---|---|---|
目的 | 実際の訪問看護サービス提供に対する報酬 | 訪問看護の計画的な管理に対する報酬 |
算定タイミング | 訪問ごとに算定 | 月1回(初日)と2日目以降で算定 |
主な算定要件 | 訪問看護を実施すること | 安全な提供体制の整備、主治医との連携など |
種類 | 一般の訪問看護基本療養費と精神科訪問看護基本療養費がある それぞれ時間や対象者によって複数種類あり | 機能強化型1~3、機能強化型以外など |
加算の有無 | 複数の加算あり | 複数の加算あり |
加算算定額の基準 | 訪問時間や対象者の状態 | ステーションの機能や訪問日 |
≫関連記事:「【丸わかり】新区分・訪問看護管理療養費1と2の違いや届出のポイントを徹底解説|2024改定版(医療)」
訪問看護基本療養費と精神科訪問看護基本療養費の一覧表
訪問看護基本療養費と精神科訪問看護基本療養費には、それぞれ複数の種類があります。
種類 | 職種 | 利用者数 | 週3日まで (1日につき) | 週4日目以降 (1日につき) |
---|---|---|---|---|
訪問看護基本療養費(I) | 看護師、保健師、助産師 | 1人 | 5,550円 | 6,550円 |
准看護師 | 1人 | 5,050円 | 6,050円 | |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 | 1人 | 5,550円 | ||
緩和ケア、褥瘡ケアまたは人工肛門、人工膀胱にかかわる専門の看護師 | 1人 | 12,850円(月1回を限度) | ||
訪問看護基本療養費(II) (同一建物居住者) | 看護師、保健師、助産師 | 同一日2人まで | 5,550円 | 6,550円 |
同一日3人以上 | 2,780円 | 3,280円 | ||
准看護師 | 同一日2人まで | 5,050円 | 6,050円 | |
同一日3人以上 | 2,530円 | 3,030円 | ||
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 | 同一日2人まで | 5,550円 | ||
同一日3人以上 | 2,780円 | |||
緩和ケア、褥瘡ケアまたは人工肛門、人工膀胱にかかわる専門の看護師 | 1人 | 12,850円(月1回を限度) | ||
訪問看護基本療養費(III) | 外泊中に指定訪問看護を実施した際 | 1人 | 8,500円 | |
精神科訪問看護基本療養費(I) | 看護師、保健師、作業療法士 | 1人 | 30分以上:5,550円 30分未満:4,250円 | 30分以上:6,550円 30分未満:5,100円 |
准看護師 | 1人 | 30分以上:5,050円 30分未満:3,870円 | 30分以上:6,050円 30分未満:4,720円 | |
精神科訪問看護基本療養費(III) | 看護師、保健師、作業療法士 | 同一日2人まで | 30分以上:5,550円 30分未満:4,250円 | 30分以上:6,550円 30分未満:5,100円 |
同一日3人以上 | 30分以上:2,780円 30分未満:2,130円 | 30分以上:3,280円 30分未満:2,550円 | ||
准看護師 | 同一日2人まで | 30分以上:5,050円 30分未満:3,870円 | 30分以上:6,050円 30分未満:4,720円 | |
同一日3人以上 | 30分以上:2,530円 30分未満:1,940円 | 30分以上:3,030円 30分未満:2,360円 | ||
精神科訪問看護基本療養費(IV) | 外泊中に指定訪問看護を実施した際 | 1人 | 8,500円 |
訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の特徴と算定条件
1. 訪問看護基本療養費(Ⅰ)
- 特徴:1人の利用者に対する訪問看護
- 算定条件:
- 週3日まで算定可能(別表7・8の疾病および特別訪問看護指示書がある場合は週4日以上も可で、増額)
- 1日単位で算定、2回訪問しても1回のみ(同日2回は別の加算)
- 職種「看護師、保健師、助産師」「准看護師」「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士」により報酬額が異なる
2. 訪問看護基本療養費(Ⅱ)
- 特徴:同一建物居住者への訪問看護
- 算定条件:
- 同一日に同一建物に居住する複数の利用者に対して訪問看護を行った場合
- 利用者が2人の場合と3人以上の場合で算定額が異なる
- 留意点:(Ⅰ)(Ⅱ)とも、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の場合は、週4回以降も増額なし
3. 訪問看護基本療養費(Ⅲ)
- 特徴:外泊時の訪問看護
- 算定条件:
- 退院後に訪問看護を受けようとする入院患者の自宅療養に備えた外泊時
- 1泊2日以上
- 別表7・8の疾病の利用者は入院中2回まで。そのほかは入院中1回まで算定可能
- 状態の変化などで退院できなくなった場合も算定できる
- 訪問看護管理療養費や。その他の加算は算定できないが、特別地域訪問看護加算だけは算定できる
4. 専門性の高い看護師による訪問看護
- 特徴:緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門・膀胱ケアの専門研修を受けた看護師が、他の看護師と共同で行う月1回限定の高度な訪問看護サービス
- 対象となる専門看護師: 以下のいずれかの専門研修を受けた看護師
- 緩和ケア
- 褥瘡ケア
- 人工肛門ケアおよび人工膀胱ケア
- 算定条件:
- 他の訪問看護ステーションまたは在宅医療を行う医療機関の看護師等と共同で同一日に訪問看護を実施
- 主治医の指示に基づいて実施
- 訪問看護報告書による主治医への報告が必要
- 対象となる利用者:
- 悪性腫瘍の鎮痛療法や化学療法を受けている者
- 真皮を越える褥瘡がある者
- 人工肛門・人工膀胱周囲の皮膚にびらん等の障害が継続・反復して生じている者
- 人工肛門・人工膀胱の合併症(皮膚障害を伴わない)を有する者
- 留意点:
- 専門研修を受けた看護師の配置を地方厚生(支)局支局長に事前届出が必要
- 同一日の訪問看護管理療養費や他の加算との併算定は不可(特別地域訪問看護加算は例外的に算定可能)
精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)(Ⅳ)の特徴と算定条件
1. 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)
- 特徴:精神障害者等1人に対する訪問看護
- 算定条件:
- 精神科を標榜する医療機関の指示に基づく場合
- 週3日まで算定可能(精神科特別訪問看護指示書がある場合は月1回14日間に限り毎日訪問も可で、増額)
- 退院日から起算して3カ月以内は週5日まで算定可能(ただし退院日は含まない)
- 看護師等(准看護師を除く)が訪問した場合に算定
2. 精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)
- 特徴:同一建物居住者の精神障害者等に対する訪問看護
- 算定条件:
- 精神科を標榜する医療機関の指示に基づく場合
- 同一日に同じ建物に居住する複数の利用者に訪問した場合
- 同一日に訪問看護基本療養費を算定する利用者と精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者数とを合算した人数で判断
- 日数制限は(Ⅰ)と同じ
3. 精神科訪問看護基本療養費(Ⅳ)
- 特徴:精神障害者等に対する外泊中の訪問看護
- 算定条件:
- 退院後に訪問看護を受けようとする入院中の患者に対して、一時的な外泊(1泊2日以上)中に訪問看護を行った場合
- 別表7・8の疾病の利用者は入院中2回まで。そのほかは入院中1回まで算定可能
30分未満の訪問の算定要件について
30分未満の訪問については、短時間訪問の必要性を医師が認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合のみ算定できます。
(Ⅰ)と(Ⅲ)とも、訪問看護記録書(月の初日のみ)、訪問看護報告書および訪問看護療養費明細書へ、当該月の最初の訪問時における、GAF尺度により判定した値を記載することが算定要件です。
これらの特徴と算定条件を理解し、適切な基本療養費を選択することで、効率的な訪問看護サービスの提供と適切な報酬算定が可能となります。
GAF尺度の活用や特別訪問看護指示書の確認など、共通の注意点にも留意しましょう。
≫参考記事:「GAF尺度って⁇精神科訪問看護に必要なGAF評価方法についてわかりやすく解説します」
訪問看護基本療養費と精神科訪問看護基本療養費の比較
訪問看護基本療養費と精神科訪問看護基本療養費は、それぞれ特徴や算定要件が異なります。ここでは、両者の主な違いを比較することで、理解を深めましょう。
精神科訪問看護基本療養費を算定するためには訪問する職員名の届出が必要!
精神科訪問看護基本療養費を算定するためには、精神疾患を有する者に対する相当の経験を有する看護師、准看護師、保健師、作業療法士が訪問看護を行うことが定められており、地方厚生(支)局支局長への、看護師名の届出が必要です。
≫詳しくはこちら:「精神科訪問看護のまるわかり算定ガイド。算定要件から研修、レセプトまでわかりやすく解説します。」
種類の違い
精神科訪問看護基本療養費 (Ⅰ)は1人の利用者への訪問看護で、訪問看護基本療養費 (Ⅰ)と同じですが、精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ) (Ⅳ) と訪問看護基本療養費(Ⅲ)は、下の表のように違っているので、間違わないようにしましょう。
種類 | 訪問看護基本療養費 | 精神科訪問看護基本療養費 |
---|---|---|
(I) | 1人の利用者 | 1人の利用者 |
(II) | 複数名の同一建物居住者 | 平成30年度改定で廃止 |
(III) | 外泊時 | 複数名の同一建物居住者 |
(IV) | – | 外泊時 |
算定要件の違い
訪問看護基本療養費と精神科訪問看護基本療養費の主な算定要件の違いは以下のとおりです。
算定要件 | 訪問看護基本療養費 | 精神科訪問看護基本療養費 |
---|---|---|
指示書の発行元 | 主治医(診療科を問わない) | 精神科を標榜する医療機関の医師 |
訪問回数の制限 | ・原則週3回まで ・別表7.8と、特別訪問看護指示書がある場合(2週間)は例外あり | ・原則週3回まで ・精神科特別訪問看護指示書がある場合(2週間)は例外あり |
時間 | 30分から90分未満 | 30分までと30分以上に区分が分かれている |
特に精神科訪問看護基本療養費の算定にあたっては、職員の経験や研修の要件、届出の必要性に十分注意を払う必要があります。
加算の違い
訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)と精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)の加算を比較した表は以下のとおりです。
加算の種類 | 訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)7種類 | 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)6種類 |
---|---|---|
緊急訪問 | 緊急訪問看護加算 | 精神科緊急訪問看護加算 |
複数回訪問 | 難病等複数回訪問加算 | 精神科複数回訪問加算 |
長時間訪問 | 長時間訪問看護加算 | 長時間精神科訪問看護加算 |
乳幼児対象 | 乳幼児加算 | なし |
複数名訪問 | 複数名訪問看護加算 | 複数名精神科訪問看護加算 |
夜間・早朝・深夜 | 夜間・早朝訪問看護加算または深夜訪問看護加算 | 夜間・早朝訪問看護加算または深夜訪問看護加算 |
特別地域 | 特別地域訪問看護加算 | 特別地域訪問看護加算 |
主な違いは次の2点です。
1. 精神科訪問看護基本療養費には乳幼児加算がない 2. 複数名訪問に対する加算の算定要件・報酬額が異なる |
つまり、上記の2点以外は概ね要件・報酬額は同じです。
≫加算についてはこちら:「【一覧表あり】医療保険による訪問看護の加算総まとめ|2024年診療報酬改定対応」
≫精神科訪問看護の加算について:「精神科訪問看護のまるわかり算定ガイド。算定要件から研修、レセプトまでわかりやすく解説します」
レセプト請求の効率化と注意点
訪問看護の報酬請求は複雑ですが、効率化と正確性を高めるポイントがあります。2024年の制度改定も踏まえ、重要な点を解説します。
2024年度の主な変更点と対応
2024年度は訪問看護のレセプト請求に以下の大きな変更があり、請求業務の効率化と正確性向上が期待できます。
- オンライン資格確認の導入
- マイナンバーカードを使用した保険資格のオンライン確認
- 最新の保険情報がリアルタイムで確認可能
- オンライン請求の義務化
- 2024年7月請求分から医療保険の訪問看護療養費はオンライン請求開始
- 2024年秋の保険証廃止に伴い、オンライン請求・資格確認が義務化
訪問看護基本療養費のレセプト記載のポイント
効率的で正確な請求業務を行うために、以下のポイントに注意しましょう。
- 事前確認の徹底
- 保険証の有効期限確認:毎月の確認またはオンライン資格確認の利用
- 訪問看護指示書の内容確認:指示期間、傷病名、医療機器等の記載漏れチェック
- リスト作成、リマインダー設定が有効
- ダブルチェック体制の構築
- 複数の職員による請求内容の相互確認
- チェックリストの活用で確認漏れを防止
- 請求システムの適切な利用
- 入力データの定期的な確認
- システムトラブルに備えたバックアップ
- 業務効率化ツールの活用
- 訪問看護療養費請求一覧表の作成
- 保険請求業務・レセプトチェック・返戻代行などのサービスの利用
特に事前確認とダブルチェックは、ミスを防ぐ上で非常に重要です。適切なシステムの活用と人の目による確認を組み合わせることで、より確実な請求業務が実現できます。
正確な請求業務の重要性
請求業務が正確でないと、返戻の対象となり支払い遅延や未払いが生じキャッシュフローに悪影響を及ぼします。また繰り返しミスがあると、保険者からの信頼を失い監査や指導の対象となるでしょう。さらに、修正作業に時間を取られることで本来の看護業務に集中できなくなり、サービスの質の低下や業務効率の悪化し、ステーション運営に悪影響を及ぼすことになります。
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訪問看護基本療養費の算定における用語解説
週の開始日の定義と算定期間の考え方
訪問看護基本療養費の算定において、「週」は以下のように定義されます。
- 週の定義
- 日曜日から土曜日までが1週間
- 常に日曜日が週の開始日
- 算定のポイント
- カレンダーの表記に関わらず、日曜日起算で考える
- 月をまたぐ場合も、この原則は変わらない
同一建物とは
医療保険における「同一建物」とは、「居住者」のことを指します。以下の建築物に居住またはサービスを利用する複数の利用者を「同一建物居住者」と呼びます。
・養護老人ホーム ・軽費老人ホーム ・有料老人ホーム ・特別養護老人ホーム ・マンションなどの集合住宅 ・短期入所生活介護 ・小規模多機能型居宅介護 ・認知症対応型共同生活介護など |
この定義は、訪問看護基本療養費(Ⅱ)の算定に直接関わるため、正確に理解が欠かせません。3人以上の同一建物居住者への訪問看護は、個別の訪問と異なる算定方法が適用されます。
まとめ
今回は、訪問看護基本療養費について詳しく解説しました。
原則として1日1回、週3日までという基本ルールがあります。ただし、特定の疾患を抱える利用者や特別指示書がある場合には例外もあります。
注目すべきは、訪問場所(個人宅か同一建物か)や訪問する職種(看護師、准看護師、理学療法士など)によって費用が変わる点です。
さらに、精神科訪問看護基本療養費との違いや、2024年度の制度改定にも目を配る必要があります。
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最後までご覧くださりありがとうございました。