訪問看護のリハビリの基本ルールと基準
訪問看護のリハビリの目的と定義
訪問看護ステーションが提供するリハビリは、利用者の心身機能の維持・回復、自立した日常生活の支援を目的としています。
看護職やセラピスト(リハビリ専門職)が利用者の自宅を訪問し、リハビリテーションを提供します。
主治医が必要であると判断し指示した場合に、訪問看護でリハビリを提供することが可能です。
ただしあくまでも、疾病や障がいにより在宅で継続して療養を受けている方に対し、看護師などが行う療養上の世話や必要な診療の補助を行う訪問看護業務の一環であるという位置づけです。
要するに、訪問看護ステーションは、高まる看取りなどの医療ニーズにしっかり対応できることが求められています。
介護保険と医療保険でのリハビリ提供の違い
訪問看護のリハビリは、介護保険と医療保険の両方で提供されますが、訪問できる回数の制限に違いがあります。
介護保険での訪問看護リハビリ:主治医の指示だけでなくケアプランに基づいて行う必要があります。看護師の訪問によるリハビリは回数に制限がありません。一方セラピストによるリハビリは、1回当たり20分以上、週6回まで、合計週120分まで算定可能です。
医療保険での訪問看護リハビリ:主治医の指示に基づいて行われ、1日1回、週3回まで算定可能です。ただし、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合や病状の急性増悪などにより、特別指示がある場合は、1日の訪問回数と1週間の訪問回数の上限が適用されません。
訪問看護でのリハビリに関するルール
訪問看護でのセラピストによるリハビリに関するルールは、以下のとおりです。
- PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)の3種類でルールや料金は同じ。
- 介護保険と医療保険で料金が異なる。
- 介護保険: 20分、40分、60分の時間区分があり、地域加算により地域ごとに料金が変動。要支援と要介護で料金が異なる。
- 医療保険: 30分から90分。週4日以上提供した場合、4日目以降は看護師より1,000円報酬が減る。
- 介護保険では、1日に2回を超えた場合は10%減算(要支援では50%減算)。
- 前年度のセラピストによる訪問回数>看護職員による訪問回数か、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない事業所は、一定の減算。
- リハビリ提供には、初回と定期的(概ね3ヶ月に1回以上)に看護師の訪問が必要。
- 訪問看護指示書にリハビリ職種、1日あたりの時間、週の回数の記載が必要。
- セラピストは毎月の報告書に加え、別添としてサービス内容詳細の記載が必要。
以上のルールを理解し、正しく記録・請求することが重要です。
(参考:R5年厚生労働省「訪問看護 参考資料」)
訪問看護のリハビリと訪問リハビリの違いと役割
訪問看護ステーションのリハビリと訪問リハビリは、ともに在宅での療養生活を支援するためのサービスですが、その特徴や役割には違いがあります。
両サービスの特徴と定義
訪問看護のリハビリと訪問リハビリの主な違いは以下のとおりです。
項目 | 訪問看護リハビリ | 訪問リハビリテーション |
提供主体 | 訪問看護ステーション、病院・診療所 | 病院・診療所、介護老人保健施設など |
提供職種 | 看護職、セラピスト | セラピスト |
特徴 | リハビリは訪問看護の一環である | リハビリテーションに特化 |
医師の指示 | 主治医の指示書が必要 | 事業所の医師の指示が必要 |
なお、訪問リハビリも、訪問看護と同様に医療保険による訪問と介護保険による訪問があり、介護保険が優先されます。ほとんどの訪問リハビリは介護保険によるサービスです。
両サービスの併用と留意点
訪問看護と訪問リハビリは、利用者のニーズや状態に応じて、併用することが可能です。
たとえば医療的ケアが必要な利用者に対して、訪問看護で看護師が健康管理を行い、訪問リハビリでセラピストが集中的なリハビリを提供するといった連携が考えられます。
ただし、両サービスの併用にあたっては、以下の点に留意が必要です。
- 介護保険利用の場合は、ケアマネジャーを中心に、利用者の状態や目標に応じた適切なケアプランを作成する
- 介護保険の限度額内でサービスを組み合わせる
- サービス提供事業者間で情報共有や連携を密に行い、一貫性のあるケアを提供する
訪問看護と訪問リハビリの役割や特性を理解し、利用者一人ひとりに合わせた最適なサービス提供を行うことが重要です。両者の強みを生かした連携を図ることで、在宅療養者の生活の質の向上につなげていきましょう。
訪問看護のリハビリへの2024年度介護報酬改定の影響と対応策
2024年度の介護報酬改定で、訪問看護におけるリハビリに関連して大幅な見直しが行われています。
訪問看護ステーションは、セラピストの適切な活用と連携強化により、利用者の在宅療養を支援する中心的な役割が期待されています。
セラピストによる訪問看護の評価の見直し
セラピストによる訪問看護において、以下の2点が改定されました。
- 一定の基準に該当する場合に8単位/回の減算が適用される
- 要支援者では12ヶ月を超えて行う場合の減算が5単位から15単位に拡大
改定の内容について詳しくは以下を参照してください。
≫リハビリテーション関連の減算まとめ:【知らないと減算⁈】訪問看護の2024年介護報酬改定|リハビリの変更点など徹底的に読み解きます!
訪問看護ステーションには、医療ニーズの高い重度者に、24時間・365日の訪問を行い、地域包括ケアシステムの要となることが求められているのです。
訪問看護事業所の対応策と運営工夫
今回の改定により訪問看護のリハビリに対する評価は厳しくなっていますが、訪問リハビリが地域には存在しないなどの理由で、訪問看護ステーションでもリハビリを適正に行っている事業所は多いのが実情です。ジレンマを感じずにはいられない管理者もいるでしょう。
今後も医療ニーズに対応できる訪問看護が行われるよう、リハビリとのすみ分けが進むことが予想されます。しかし、リハビリとの連携が評価されるようになる期待もできます。
訪問看護ステーションは、今一度体制を見直し、今後の動向に注目する必要があります。
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訪問看護事業所の管理者は、看護とリハビリテーションを一体的に提供する体制を整え、地域における在宅療養者の自立支援に取り組むことが求められています。さらに、医療と介護のスムーズな連携を実現し、利用者の心身機能の維持・向上を図ることが重要な役割となるでしょう。
≫関連記事:【限定公開】管理者必見‼ 2024年ダブル報酬改定を踏まえた 訪問看護ステーションの対策
訪問看護のリハビリの提供方法とアプローチ
リハビリを提供する際には、利用者一人ひとりの状態や目標に合わせ、適切なリハビリメニューを選択し、効果的なアプローチを行うことが重要です。
看護師とセラピストの役割分担と連携
訪問看護師は、利用者の全身状態のアセスメントや健康管理、医療的ケアの提供において強みを発揮します。
一方、セラピストは、各分野における高度な知識と技術を持ち、身体機能の評価や運動療法、日常生活動作の指導、コミュニケーション能力の向上などに強みがあります。
両者が密接に連携し、それぞれの専門性を生かすことで、利用者に包括的で効果的なリハビリテーションを提供できます。
セラピストの専門性
看護師がセラピストと協働して実感した、セラピストの専門性の素晴らしさを紹介します。
◆セラピストは利用者に明確な目標を持たせ、病気で失った生活や人生を取り戻すためのリハビリを行うことができる。 ◆制度改正により、訪問看護師がリハビリの現場に同行する機会が増えている。セラピストの関わりから看護職が学ぶことも多い。 ◆セラピストが看護職ではカバーしきれない部分を補ってくれる。 |
機能維持・改善、ADLトレーニング、住環境整備
訪問看護のリハビリでは、利用者の身体機能の維持・改善を図るとともに、日常生活動作(ADL)の自立に向けたトレーニングを行います。具体的には、以下のような支援を行います。
- 残存機能を活かしたADLトレーニング
- 福祉用具の活用方法の指導
- 住宅改修や環境調整の提案
- 家族への介護指導と支援
これらの支援を通じて、利用者が自宅で安全かつ自立した生活を送ることができるよう、多角的なアプローチを行います。
利用者の状態に合わせたリハビリメニュー
以下は訪問看護リハビリにおける利用者の状態に合わせたリハビリメニューの具体例です。
看護師とセラピストが協力し、利用者の生活全般を支えることで、在宅療養生活の質の向上を目指しましょう。
訪問看護のリハビリ事例:目標達成に向けて真剣に取り組むリハビリ
Aさん(70歳、男性)は、脳梗塞の後遺症により左半身に麻痺があり、歩行や入浴などの日常生活動作に支障がありました。Aさんは「少しでも自分のことは自分でできるようになりたい、自分で歩いて家の風呂に入りたい。」と希望し、訪問看護でリハビリを利用することになりました。
理学療法士と作業療法士が協力しAさんの残存機能を評価した上で、ご自宅の環境に合わせ、段階的な歩行訓練やバランス訓練、入浴動作の練習などを行いました。ヘルパーとも連携し、ベッドから浴室までと浴室の環境も工夫しました。看護師は、Aさんの健康状態を管理しつつ、ご家族に介護方法を指導しました。
Aさんは当初こそ積極的ではなかったものの、効果的なリハビリによる効果を実感するようになると次第に真剣に取り組み、徐々に動作能力が改善していきました。半年後には、つたい歩きでの屋内移動が可能となり、入浴動作も一部介助で行えるようになりました。その後は訪問看護による健康管理は続けながら、通所でのリハビリに通うようになっています。
「諦めずにリハビリを続けてよかった。これからも自分でできることを増やして自宅で過ごしていきたい。」と話され、さらなる目標に向けて取り組んでいます。
この事例での成功のカギは、それぞれのスタッフの専門性を活かして技術を共有し、訓練や自宅環境を最適にセットした連携にあります。一歩一歩、 ゴールに近づくための作戦を立てて行動した結果でした。
訪問看護師がリハビリを行う上での大切な視点
セラピストが在籍しない訪問看護ステーションや、訪問リハビリを利用しないケースも多くあります。その場合、医師の指示に基づき看護師がリハビリを行います。
訪問看護師がリハビリを行う上では、以下の点が特に重要となります。
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看護師とセラピストの協業体制構築:分業から協業へ
在宅でのリハビリにおいて、看護師とセラピストが協業し、シームレスなサービスを提供することが求められていることがおわかりになったと思います。従来の役割分担による分業体制から、互いの専門性を活かした協業体制へと移行することが重要です。
協業体制の必要性と効果
看護師とセラピストが協業することで、以下のような効果が期待できます。
- 利用者のニーズに応じた、包括的で切れ目のないサービス提供
- 互いの専門性を活かした、質の高いケアの実現
- 利用者の在宅療養生活の質の向上
- 職種間の相互理解と信頼関係の構築
協業体制を構築することは、訪問看護ステーションの運営基盤を強化し、利用者により良いサービスを提供するために不可欠です。
看護師とセラピストの効果的な連携方法
看護師とセラピストが効果的に連携するために、以下のような方法が挙げられます。
- 利用者のニーズや目標を共有し、共通のゴールを設定する
- 日々のコミュニケーションを大切にする(記録時間の雑談がきっかけで連携が進むこともあるため、直行直帰だけの勤務スタイルの変更が必要)
- 定期的なカンファレンスやミーティングを開催し、情報共有を徹底する
- 訪問看護記録や連絡ノート、情報共有ツールを活用し、リアルタイムな情報共有を行う
- 各職種の専門性を活かした役割分担を明確にし、責任範囲を確認する
- 必要に応じて、役割分担の見直しや調整を行う
管理者は、看護師とセラピストの連携が円滑に進むよう、体制整備や調整を行うことが求められます。
利用者への統一したアプローチとコミュニケーション
看護師とセラピストが協業する上で、利用者への統一したアプローチとコミュニケーションが重要です。具体的には、以下のような点に留意しましょう。
- 利用者やご家族に対し、一貫した方針やゴールを伝える
- 利用者の状態変化や課題について、随時情報共有し、対応方針を統一する
- 利用者やご家族の意向や希望を尊重し、意思決定を支援する
多職種間で利用者への対応を統一することで、利用者やご家族の安心感や信頼感を高めることができます。
互いの専門性を活かしながら、チームとして利用者に質の高いサービスを提供することが求められているのです。
(参考:全国訪問看護事業所協会「訪問看護事業所における看護職員と理学療法士等のより良い連携のための手引き」について)
まとめ:訪問看護のリハビリの発展に向けて
今回は、訪問看護リハビリの基本ルールから2024年度介護報酬改定の影響、看護師とセラピストの協業体制構築までを解説しました。
今後も適切な訪問看護が行われるよう法改正が予想されますが、利用者のQOL向上を目的とするサービスを軸として体制を整えていくことで、大きな変更は不要でしょう。
訪問看護リハビリの発展には、看護師とセラピストの強みを生かした連携が不可欠。互いの専門性を認め合い、補い合いながら、利用者に最適なサービスを提供していくことが求められます。
管理者には、連携体制構築に向けたリーダーシップを発揮し、カンファレンスや情報共有ツールの活用などを通じて、多職種間の相互理解と信頼関係を深めていただきたいと思います。
さらに、地域の関係機関との連携を深め、多職種協働によるケアの提供体制を整備し、これからの時代に求められる訪問看護リハビリのあり方を、現場の知恵と経験を結集して創造していきましょう。
えがおDE看護は”電子カルテ機能”と”レセプト請求機能”に特化して、26年現場の声や複雑な制度に対応し続けているので、訪問看護ステーション業務をお任せできます。
管理者の本来の使命であるステーション運営を通じた「良質な看護サービスの提供」 に当たり前に集中できる毎日を実現します。是非お問い合わせください。
最後までご覧くださりありがとうございました。