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医師に聞いた、訪問看護報告書の効果的な書き方|基本ルールから効率化テクニックまで解説!

医師に聞いた、訪問看護報告書の効果的な書き方|基本ルールから効率化テクニックまで解説!

公開:

2024年7月24日

更新:

2024年7月24日

「どこまで詳しく書けばいいんだろう」
「忙しいので効率良く書きたい…」
「主治医は読んでくれているの?」

このように訪問看護報告書の作成に悩む方もいるのではないでしょうか。

効果的な訪問看護報告書は、よりよい医療サービスにつながります。
この記事では、訪問看護報告書の基本ルールから効率化テクニックまで、現役の医師の意見を交えて徹底解説します。 厚生労働省の最新の指針に基づいた正しい記載方法や、医師が本当に求める情報など、即実践できる内容をお届けします。

訪問看護報告書作成の悩みが解消され、業務効率の向上につながること間違いなしです!ぜひ最後まで読んで、お役立てください。

目次

 

訪問看護報告書は、訪問看護ステーションが利用者に提供したサービスの内容や利用者の状態を主治医に報告するための文書です。

この報告書は、利用者の健康状態の変化や看護の効果を医師に伝え、適切な医療サービスの提供につなげる役割を果たします。

 


 

訪問看護報告書の主な目的は以下の通りです。

           
    1. 利用者の健康状態の変化を主治医に報告する
    2.  
    3. 提供した看護サービスの内容と効果を伝える
    4.  
    5. 多職種連携を促進し、総合的な医療・介護サービスの質を向上させる     
    6.      
    7. 医療保険や介護保険の請求の根拠となる

 

法的には、訪問看護報告書は指定訪問看護の運営基準に基づいて作成が義務付けられています。厚生労働省は、訪問看護ステーションに対して、定期的な訪問看護報告書の作成と主治医への提出を求めています。

 


 

訪問看護報告書は、以下のルールに従って作成・提出する必要があります。

 作成頻度 「定期的に」と定められており、月1回を目安に提出するとよい
提出期限明確な期限を定められていないため、ステーションで決めることができる
作成者介護保険看護師または保健師
セラピストは別添の報告書を作成しなければならない
医療保険看護師または保健師
セラピストは看護職員(准看護師を除く)と連携し作成する
保管期間2年間や5年間と、都道府県によって異なる

訪問看護計画書の記載と重複する箇所がある場合は、訪問看護報告書における重複箇所の記載を省略しても差し支えないこととなっています。

(参考:厚生労働省「訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて」「訪問看護計画書等の記載要領等について」「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」 の一部改正について」

 

≫関連記事:「ケア&ステーションの質向上!訪問看護計画書の効果的な書き方を徹底解説」

 


 

訪問看護報告書の正しい提出先と方法は以下の通りです。

  • 提出先
    1. 主治医(必須):利用者の主治医に必ず提出します。
    2. ケアマネジャー(任意):必要に応じて、利用者のケアマネジャーにも情報提供します。
  • 提出方法
    1. 手渡し
    2. 郵送
    3. FAX(事前に医療機関の了承を得ること)
    4. 電子的な方法(要電子署名)

提出の際は、個人情報保護に十分注意し、誤送付や情報漏洩が起こらないよう細心の注意を払う必要があります。

 

利用者が死亡した場合、訪問看護報告書の作成と提出には特別な対応は必要なく、通常の提出と同じです。

亡くなるまでの経過と訪問看護の内容に加え、主治医への感謝と、グリーフケアを行った場合にはその様子などを添えるとよいでしょう。

 

 

訪問看護報告書を適切に作成することは、利用者の健康管理と医師との連携において重要です。ここでは、厚生労働省が定める基本様式に沿って、各項目の記載方法と注意点を解説します。

 


 

厚生労働省が定める訪問看護報告書の基本様式には、以下の3種類があります。

①介護保険用

②医療保険用

③精神科訪問看護用


それぞれの記載項目は若干異なりますが、概ね以下のようなものがあります。

           
    1. 利用者情報
    2.  
    3. 訪問日
    4.  
    5. 病状の経過
    6.      
    7. 看護の内容
    8.      
    9. 家庭での介護状況
    10.      
    11. 衛生材料の使用
    12.      
    13. 情報提供
    14.      
    15. 特記事項
    16.      
    17. GAF(精神科訪問看護の場合)

 

各項目の記載方法を詳しくみていきましょう。

利用者情報欄には以下の事項を正確に記入します。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 要介護認定の状況(〇で囲む)
  • 住所

要介護認定の状況は、サービス提供の根拠となるため、最新の情報を反映させることが大切です。

 

訪問日の欄には、訪問の種類や頻度が一目で分かるように、以下のように記号を使用します。

  • 指定訪問看護を実施した年月を記入
  • 訪問した日に以下の記号を使用して囲む
    •  ○:保健師、助産師、看護師、准看護師による訪問
    • ◇:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問
    • △:特別訪問看護指示書に基づく訪問
    • ◎:1日に2回以上訪問した日
    •  □:長時間訪問看護加算を算定した日
    • レ:30分未満の訪問(精神科訪問看護の場合)

 

病状の経過欄には、利用者の健康状態やADL(日常生活動作)の変化を具体的に記載します。
以下のポイントに注意しましょう。

  • 客観的な観察事項を中心に記載
  • バイタルサインの変化を明記
  • ADLの改善や悪化を具体的に説明
  • 新たな症状や既存の症状の変化を詳細に記述
記載例:

 バイタルサイン
 ・体温:〇℃~〇℃
 ・血圧:〇mmHg~〇mmHg
 ・脈拍:〇回/分~〇回/分
 ・SpO2:〇%~〇%
 血圧が安定し、自力での食事摂取が可能になった
 右膝の痛みが増強し、歩行時に支えが必要になっている  
 

 

看護の内容欄には、実施した看護行為や処置、リハビリテーションを列記します。

記載例:

 バイタルサイン、ADL状況の確認、褥瘡処置、体位変換指導、栄養指導  
 

 

この欄には、家族などによる介護の実施状況や療養環境について、以下の内容を記入します。

  • 主な介護者と介護の内容
  • 家族の健康状態や介護負担の程度
  • 療養環境の変化(ベッドの導入など)
  • 家族への指導内容とその効果
記載例:

 長男夫婦が主な介護者
 食事介助と排泄介助を行っているが、このところ夜間の介護に疲労感がみられる 
 介護方法の指導を行い、負担軽減を図った  
 

 

なお、精神科訪問看護では、「家族等との関係」を記載します。

家族や関わりのある友人、近所の人などとの対人関係について記載しましょう。

記載例:

 夫の理解は良好。夫以外との関わりはほとんどない。  
 

 

衛生材料の使用状況を記載します。

衛生材料とは、絆創膏・ロールフィルム・ガーゼ・輸液セットなどです。

  • 使用した衛生材料の名称
  • 使用量と交換頻度
  • 1ヶ月間の使用総量
記載例:

 ガーゼ(10cm×10cm):1日2回交換、月間使用量60枚  
 

 

次に、衛生材料の種類・量の変更の必要性と内容について記載します。

  • 衛生材料の変更の必要性(有無を○で囲む)
  • 変更が必要な場合は、その内容を具体的に記入
記載例:

 創部の状態改善により、サイズダウンが可能。7cm×7cmへの変更を提案。  
 

 

医療保険適用の利用者で、「訪問看護情報提供療養費」の算定に関わる情報提供を行った場合、情報提供先を記入します。

訪問看護情報提供療養費:訪問看護ステーションが市町村(自治体)や義務教育諸学校、保険医療機関などに対して、訪問看護に関する情報を提供した場合に算定できる療養費のこと。

 

「特記すべき事項」欄には、他の欄に記入できなかった重要な情報や、頻回な訪問が必要な理由を記載します。

記載例:

 胃瘻チューブの自己抜去リスクが高く、1日3回の訪問を実施。家族への見守り方法の指導を継続中。  
 

 

精神科訪問看護の場合、月の初日の訪問時におけるGAF(Global Assessment of Functioning)尺度による評価を記入します。

記載例:

  GAF:65点(2024年7月1日判定) 
 

≫関連記事:「GAF尺度って⁇精神科訪問看護に必要なGAF評価方法についてわかりやすく解説します」

 


 

厚生労働省の指針によると、継続して訪問看護を提供している利用者で、当該月に1回しか訪問看護を実施しなかった場合は、訪問看護記録書Ⅱの複写を報告書として使用することができます
この場合、以下の点に注意してください。

  1. 訪問看護記録書Ⅱに必要事項がすべて記載されていることを確認
  2. 複写であることを明記し、原本と相違ないことを証明
  3. 管理者の確認印を押印

この方法を活用することで、報告書作成の効率化を図ることができます。ただし、利用者の状態に大きな変化がある場合や、特記すべき事項がある場合は、通常の報告書を作成することをおすすめします。

 

 

介護保険によるセラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が関わる訪問看護においては、別途リハビリの詳細な報告書の提出が義務付けられています。

セラピストによる訪問看護報告書は、利用者の機能回復や生活の質の向上を示す文書です。

厚生労働省が定める「理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護の詳細 別添」フォーマットに基づいて、効果的な記載方法と重要なポイントについて解説します。

 


このフォーマットには以下の項目があります。

  • 利用者氏名
  • 日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度
  • 作成者氏名、職種

 

  • 実施したリハビリテーションの内容、家族指導、リスク管理等を具体的に記述
記載例:

  運動前後で、バイタルサインの測定、異常は認めない。呼吸リハビリテーションの実施。 
 

 

  • 食事、整容、トイレ動作、入浴、移乗、歩行、階段昇降など
  • 各ADL項目を0~15点の自立、一部介助、全介助で評価し、合計点を記載
  • 各項目の備考欄に具体的な状態を記述
備考欄記載例:

  15分程度の平地歩行は、フリーハンドで可能。坂道はT杖使用。 
 

 

  • 家庭内の役割、余暇活動、社会地域活動の内容と頻度を具体的に記述
  • 終了後に行いたい社会参加等の取り組みは具体的な目標を記載
記載例:

  通所リハビリテーションへの参加   
 

 

  • 構音障害や会話能力について具体的に記述
記載例:

  構音障害により明確さにかけるが日常会話可能。歩行しながらの会話は困難で、立ち停まり話す必要がある。   
 

  

  • 看護職との情報共有や連携内容を具体的に記述
記載例:

  訪問時の状態を報告し共有。訪問時に血糖値・体力の状況を確認してリハビリテーションを行う事で、中断する事なくリハビリテーションを続けている。   
 

  

  • 特記事項を記載
  • 週の訪問回数を記載する

 

このような客観的で具体的な記載により、リハビリテーションの進捗状況や効果が明確に伝わり、多職種連携や次回の訪問看護計画の立案に活かすことができます。

 

 

5名の現役医師からの意見をもとに、効果的な訪問看護報告書の在り方と改善方法について解説します。

 


フォームの回答のグラフ。質問のタイトル: Q1. 訪問看護報告書は読まれていますか?。回答数: 5 件の回答。
フォームの回答のグラフ。質問のタイトル: Q2. 報告書は患者の状況を理解するのに役に立ちますか?。回答数: 5 件の回答。
フォームの回答のグラフ。質問のタイトル: Q3. 状態が前月とほぼ変わらない時は、。回答数: 5 件の回答。

  Q4.自由回答

 


 

自由回答の意見も踏まえた、医師が重視する点は以下のとおりです。

  1. 簡潔性と重要情報の明確化
    • 変化がない場合は「先月と概ね変わりない」と簡潔に記載
    • 長文ではなく、箇条書きを用いて、ポイントを記載
    • 重要な変化や問題点は詳細に記載し、視覚的に強調(太字、下線など)

  2. 問題点の抽出と解決策の提案
    • 看護師の視点からの問題点と解決策を提示
    • 看護師独自の観察や提案を積極的に記載

  3. 患者の隠れた側面の報告
    • 医師の前では見せない患者の姿や在宅での様子を記載

訪問看護報告書は医師との重要なコミュニケーションツール。これらの医師の意見を積極的に取り入れ、簡潔かつ有用な情報提供を心がけることで、チーム医療の質を向上させ、利用者にとってより良いケアの提供につながります。常に改善の姿勢を持ち、効果的なコミュニケーションを目指しましょう。

可能な場合は、訪問看護報告書を持参して医師や看護師と直接顔を合わせてコミュニケーションをとることで、より深い連携が図れるでしょう。

 

 

ここまでは、訪問看護報告書の書き方についてみてきました。
報告書の作成はなかなか時間のかかる業務。ここからは、訪問看護報告書作成の効率化と時間短縮のためのテクニックを紹介します。

効率化・時短のためには次のような工夫ができます。

  1. デジタルツールの活用
    • 訪問看護専用ソフトウェア
    • クラウドサービス(Google Docs、Microsoft 365など)
    • 音声入力機能
  2. テンプレートの作成と活用
    • 頻繁に使用するフレーズや文章パターンをテンプレート化
    • 利用者ごとの基本情報を組み込む
  3. 電子署名の導入でメール・SNSで送信可
  4. チーム内での情報共有と記録の一元管理
    • ビジネスチャットツール(LINEワークスなど)の活用
    • 標準化された記録フォーマットの使用
    • 定期的なケースカンファレンスの実施
  5. 役割分担の明確化
    • 報告書作成の担当者を決め、責任を明確化
    • チーム内でのダブルチェック体制の構築
  6. 継続的な教育と訓練
    • 新人教育プログラムに報告書作成の研修を組み込む
    • ベテラン看護師によるOJT(On-the-Job Trainin)の実施

 

効率的な訪問看護報告書作成プロセスの例
①月初め報告書作成(と計画書評価)の担当者を決めておく
②普段訪問看護ソフト日々の訪問看護記録書の入力、重要な変化をチャットツールで共有&ピン止め機能などで、作成時にすぐ確認できるようにしておく
③作成時訪問看護ソフトで先月の内容や日々の記録を訪問看護報告書に反映させる機能を使用
テンプレートを使用し、わかりやすく簡潔に記載
④チェックと承認チーム内でダブルチェック、管理者が電子署名で承認
⑤提出と保管電子的に主治医に送付、クラウドサービスで自動バックアップ

デジタルツールの活用とチーム内の協力体制の構築により、訪問看護報告書の質を維持しながら作業効率を向上させることが可能です。

これらのテクニックを活用し、より効果的な訪問看護サービスの提供につなげましょう。

 

 

訪問看護報告書は、利用者のケアの質を高め、多職種連携を促進する重要なツールです。

基本ルールと医師のニーズを理解し、簡潔かつ網羅的に情報を伝えましょう。変化や問題点を明確に示し、効率的な作成を心がけることで、質の高い報告書が作成できます。

この記事が、毎月の訪問看護報告書作成のお役に立てば幸いです。

 


 

えがおDE看護は”電子カルテ機能”と”レセプト請求機能”に特化して、26年現場の声や複雑な制度に対応し続けているので、訪問看護ステーション業務をお任せできます。

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最後までご覧くださりありがとうございました。

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